Skip to main content
Logo
Overview

火災保険の値上げ前に水災補償を見直す2026

June 4, 2026
1 min read

毎年6月になると、ニュースで川の増水や浸水の映像が流れ始める。そのたびに「うちの火災保険、水害ってカバーされてたっけ」と契約証券を引っ張り出す人がいる。私もその一人だった。証券を開いても、専門用語が並んでいて結局よく分からないまま閉じる——という経験に心当たりはないだろうか。

結論から言うと、水災補償を外していいかどうかは、住んでいる場所と建物の形でほぼ決まる。全員にとっての正解はない。そして今年は、見直すなら早めに動いたほうがいい事情がもう一つある。火災保険料の値上げ基調が続いているからだ。

この記事で押さえるのは、次の4点だ。

  • 自宅の「水災区分」をどう調べ、保険料にどう効くのか
  • 水災補償を外していい家・残すべき家の見分け方
  • 値上げ前に「5年契約」で固定する損得
  • やってはいけない見直しと、動くときの順番

順に見ていく。自分の住所と建物を当てはめながら読むと、読み終わるころには「うちはどうすべきか」の輪郭が見えるはずだ。

値上げはなぜ止まらないのか

火災保険料のベースになる「参考純率」は、損害保険料率算出機構が算出している。2023年6月の改定では全国平均で13.0%もの引き上げとなり、これが2024年10月に大手損保各社の保険料へ反映された。実際の値上げ幅は全国平均で1割前後だ(損害保険料率算出機構)。

背景には、大きく3つの要因がある。

  • 自然災害の頻発:台風や線状降水帯による水害が毎年のように発生し、保険金の支払いが膨らんでいる
  • 修繕・再建費の高騰:建築資材と人件費の上昇で、同じ家を建て直すのにかかる費用が10年前より明らかに上がった
  • 築古住宅の増加:老朽化した住宅ほど事故率が上がり、全体の支払いを押し上げる

再建費が上がれば、それを補償する保険料も上がる。だから一度きりで終わる話ではなく、その後も改定が続く見込みとされている。契約中の人に届く更新案内の保険料が、前回より2割近く上がっていた、という声も実際にある。

ここで覚えておきたいのが契約期間の話だ。火災保険の最長契約期間は、かつて35年だったものが2015年に10年、2022年10月からは5年に短縮された。長く固定したくても、もう5年が上限である。逆に言えば、改定前の料率を固定したいなら「今の5年契約」が使える最後のカードになる。長期契約が短くなったということは、値上げが保険料に反映されるサイクルも以前より速くなったということだ。10年契約で一度固定すれば10年安泰、という時代は終わっている。

まず自宅の「水災区分」を調べる

2024年10月の改定で大きく変わったのが、水災料率の細分化だ。それまで全国一律だった水災部分の料率が、地域の水害リスクに応じて1等地から5等地までの5区分に分かれた。

較差はそれほど極端ではない。細分化しなかった場合と比べると、最も安い1等地で約6%低く、最も高い5等地で約9%高い。1等地と5等地の差はおよそ1.2倍だ(ソニー損保)。「水害が少ない地域の人が、多い地域の分まで負担しなくて済む」方向の改定だと考えればいい。

自分が何等地かは、損害保険料率算出機構の「水災等地検索」で住所から調べられる。あわせて国土交通省のハザードマップポータルで、自宅が洪水・内水の浸水想定区域に入っているかを目で確認しておくと判断が早い。区分の数字と、地図上の色。この2つが揃えば、次の判断にそのまま使える。

具体的にイメージしてみよう。建物の補償が2,000万円の戸建てで、水災部分の保険料が年1万円相当だとする。区分による差はおおよそ次のようになる。

水災区分細分化前との差水災保険料の目安(年)
1等地(最も低リスク)約6%低い約9,400円
2〜4等地ほぼ同水準約1万円前後
5等地(最も高リスク)約9%高い約1万900円

1等地と5等地の差は年1,500円ほど、5年でも7,500円前後の開きにとどまる。区分そのものの較差は、正直それほど大きくない。だから「等地が高いから水災を外す」という判断は本末転倒だ。区分は保険料の微調整に効くだけで、外すかどうかは次に見る浸水リスクで決める話になる。

外していい家、外すと危ない家

水災補償は外せば保険料が下がる。ただし外していいかは住まいの形で分かれる。住まいのタイプ別に整理すると、こうなる。

住まいのタイプ水災補償の判断主な理由
マンション中〜高層階外す検討の余地が大きい浸水が床上まで届きにくい
高台・台地の戸建て外す検討の余地あり想定区域外で川・崖が近くにない
低地・川/崖の近くの戸建て残すべき浸水・土砂が直撃する立地
浸水想定区域内の住宅残すべき区分が低くても損害額が大きい

判断の起点はマンションか戸建てか、そして浸水想定区域に入っているかどうかだ。マンションでも1階や低層階なら戸建てに近い扱いで考えたほうがいい。

注意したいのは、水災補償が土砂崩れや高潮もカバーする商品が多いこと。「川から遠いから不要」と早合点すると、崖側のリスクを見落とす。マンションでも、機械式駐車場や1階の専有部分、共用設備が水に浸かるケースはある。区分が1等地でも、ハザードマップで色がついていれば残す方に倒すのが無難だ。

もう一つ知っておきたいのが、水災補償の支払い条件だ。多くの商品では「床上浸水、または地盤面から45cm超の浸水」「再調達価額の30%以上の損害」といった条件を満たして初めて満額が出る仕組みになっている。つまり、ちょっと床が濡れた程度では出ないことがある。逆に言えば、ひとたび床上浸水するような災害は損害が一気に数百万円規模になる。少額のリスクには反応せず、大きな損害に備えるのが水災補償の性格だと理解しておくと、要否の判断がぶれにくい。高台のマンション高層階で「床上45cm浸水」が現実的に起こり得ないなら、外す合理性は高い。低地の戸建てでそれが起こり得るなら、年数千円を惜しんで外すのは割に合わない。

保険料を動かす3要素

水災区分のほかに、保険料は次の2つで大きく変わる。

一つは建物の構造級別だ。耐火性能の高い順に3つに分かれ、この順で保険料は高くなる(日本損害保険協会)。

構造級別主な建物保険料の水準
M構造コンクリート造のマンション等最も安い
T構造耐火の戸建て・鉄骨造・省令準耐火中間
H構造木造などM・Tに該当しない建物最も高い

M構造を基準にすると、H構造の保険料は数割高くなることも珍しくない。同じ補償額でも、木造戸建てとマンションでは土俵が違うわけだ。

ここで落とし穴になるのが証明書類だ。本来はT構造に該当する省令準耐火の住宅でも、それを証明する仕様書などが手元にないとH構造として扱われ、保険料が割高になることがある。建築確認書や住宅性能の書類で自分の級別を確認しておきたい。級別が一つ違うだけで、年間の総額がはっきり変わる。

もう一つは補償範囲の取捨だ。火災・風災に加えて、水災・破損汚損・地震保険付帯をどこまで付けるか。ここを自宅のリスクに合わせて削れば、値上げ分をある程度吸収できる。たとえば破損・汚損(うっかり物を落として壊した、子どもが壁に穴を開けた等)の特約は便利だが、使う頻度と保険料を天秤にかけて外す人もいる。一方で、地震保険だけは安易に外さないほうがいい。火災保険では地震を原因とする火災・倒壊・津波は補償されず、地震保険は単独では加入できないからだ。

ここで、よくある誤解も一つ整理しておく。火災保険の保険金額は「今いくらで建つか(再調達価額)」で設定するのが原則で、土地代は含まない。築20年の中古を買った人が「購入価格が3,000万円だったから3,000万円で」と設定すると、土地代を含んだ過大な金額になりがちだ。建物だけの再建費に合わせれば保険料は下がる。逆に、新価ではなく時価(経年劣化を差し引いた額)で契約していると、いざ建て直すとき保険金が足りない。新価/時価の設定は保険料にも補償の十分さにも直結するので、証券で必ず確認したい。

値上げ前に「5年契約で固定」する損得

改定前の料率を固定したいなら、5年一括契約という手がある。途中で料率が上がっても、契約期間中は加入時の条件が続く。長期割引が効くぶん、年あたりの単価も下がる。

ただし一括前納はまとまった支出になる。数十万円の保険料を一度に払えば、その分の家計キャッシュは拘束される。途中解約すれば返戻金は戻るが、満額ではない。5年契約と1年更新を、ざっくり比べるとこうなる。

比較項目5年一括契約1年更新
値上げの影響契約期間中は据え置き毎年の改定が反映される
年あたり単価長期割引で割安割引なしで割高
初期の支出数十万円を一括1年分ずつで軽い
補償の見直し5年間固定で動かしにくい毎年柔軟に変えられる

「値上げを避けたい」気持ちだけで飛びつかず、5年間その補償内容で困らないか、手元資金を縛っても問題ないかを天秤にかけたい。引っ越しや建て替えの予定がある人は、固定より柔軟さを優先したほうがいい場面もある。

やってはいけない見直し

保険料を下げたい一心で、やりがちな失敗がいくつかある。

第一に、補償を削りすぎて被災時の自己負担が膨らむパターン。水災を外した翌年に浸水した、免責金額を上げすぎて小さな損害では1円も出なかった、というのは典型例だ。下げた保険料の何十倍もの自己負担を抱えては意味がない。

第二に、賃貸の感覚で持ち家の保険を選ぶ間違い。賃貸で入るのは基本的に「家財保険+借家人賠償責任」で、建物自体は大家の保険でカバーされる。持ち家はその建物まで自分で守る必要があるのに、賃貸時代の安いプランの記憶で「これくらいでいいだろう」と建物補償を低く設定すると、いざというとき再建費に届かない。

第三に、二重加入の見落とし。住宅ローンの団体信用生命保険や、勤務先・自治体の共済で一部の補償が重複していないか。重なっている部分の保険料は払い損になる。証券を並べて、同じリスクを二重に買っていないか一度照合しておきたい。

ありがちな失敗を、損する方向で並べるとこうなる。

やりがちな見直し何が問題か
リスクのある立地で水災を外す浸水時に数百万円を自己負担
免責金額を上げすぎる小さな損害で1円も出ない
賃貸感覚で建物補償を低く設定再建費に保険金が届かない
地震保険を外す/付け忘れる地震火災・津波が無補償になる
団信・共済との重複に気づかない同じリスクに二重で払う

どれも「保険料を下げたかっただけ」が動機だ。下げ方を間違えると、被災した一度で何年分もの節約が吹き飛ぶ。削るなら、自宅では起こり得ないリスクから削るのが鉄則になる。

動くなら、この順番で

保険料そのものを下げる実務を、効果の大きい順に挙げておく。

  • 一括見積もりで横並び比較:同じ補償条件で複数社を並べると、同等の補償でも保険料に差が出る
  • 不要特約の整理:類焼損害・携行品損害など、使う場面が想像できない特約を外す
  • 免責金額の設定:自己負担を少し上げると保険料は下がる。ただし上げすぎは禁物
  • 新価/時価と保険金額の適正化:建物の再建費に合わせ、過大・過少どちらも避ける
  • 地震保険の割引漏れチェック:耐震等級割引・免震建築物割引・築年割引・耐震診断割引のいずれかに該当しないか確認する

割引は申告しないと適用されないものが多い。証明書類があるのに割引を取りこぼしていた、というのは実際によくある。心当たりがあれば証券と必要書類を引っ張り出してみてほしい。

進める順番としては、次の流れが迷いにくい。

  1. 水災等地とハザードマップで自宅のリスクを把握する
  2. 水災・地震など各補償の要否を決める
  3. 同じ条件で一括見積もりを取り、各社を比較する
  4. 改定前に5年契約で固定するか、月払いで様子を見るか判断する

なお、2026年の具体的な改定時期や率は、契約中の保険会社から届く案内で確認するのが確実だ。会社や商品によって改定のタイミングはずれる。ここで挙げた数字も「2026年6月時点」の傾向としてとらえ、最終的な金額は見積書で押さえてほしい。

住まいのトラブルという意味では、賃貸のカビ・原状回復で揉めるケースも多い。持ち家の人も将来貸す・借りる場面で関わるので、賃貸のカビ・退去費用の負担区分も合わせて押さえておくといい。

梅雨入りのこの週末、まずは住所を入れて自宅の水災区分を一度調べてみるところから始めてみてはどうだろう。たった数分の確認が、台風シーズン前の安心と、数年分の保険料の差につながる。