残り20日で何をやるかが、半年分の勉強より重要だ
人事院公式日程で第1次試験は2026年5月31日(日)に確定している。本記事を書いている5月11日(月)時点で残り20日。この20日でやることは「過去問の周回」一択であって、新しい参考書に手を出した瞬間に終わる。
結論から書くと、行政区分のボーダーは基礎能力21/30(70%)+専門27/40(67.5%)が一つの目安になる。2024年度の東京周辺で行政の標準点合計は概ね361点前後、2025年度以降は人物試験の配分微調整で筆記の負担がわずかに軽くなった年もあるが、「基礎で2割捨てる・専門で3割落とす」より上に乗せる構図は変わらない。
20日でこの数字に到達するのは、現役受験生というより、ここまで250〜400時間積んできた人が「最後の上積み」を取りに行く期間という意味合いが強い。底上げではなく、もう解ける問題を確実に取り切るためのチューニング期間だと考えるのが現実的だ。
3週間を「過去問・苦手潰し・調整」に割る
残り20日は3つに分ける。最初の1週で基礎能力の過去問5年分を2周、次の1週で専門択一の選択科目8つを5年分1周、最後の6日で直前模試3回+時事の最終チェック+苦手分野のミス問だけを翌日再演する。
| 期間 | 主軸 | 想定時間 | 教材 |
|---|---|---|---|
| 5/11〜5/17 (Week 1) | 基礎能力過去問5年×2周 | 平日3h+休日8h | 過去問500・スー過去 |
| 5/18〜5/24 (Week 2) | 専門択一8科目過去問5年 | 平日3h+休日8h | スー過去・新スー過去 |
| 5/25〜5/30 (Week 3) | 模試3回+時事+ミス問再演 | 平日2h+休日6h | 速攻の時事・LEC/TAC模試 |
平日3時間×15日+休日8時間×5日でおよそ85時間。体調調整日や試験前日を引いても直前期だけで70時間は確保できる計算だ。これ以上の詰め込みは試験当日のパフォーマンス低下と引き換えになるので、80時間台で着地させるのが無理がない。
Week 1の基礎能力2周のうち、1周目は「全問解いて間違いを記録」、2周目は「1周目で間違えた問題と勘で当てた問題だけ」を回す。2周目は1周目の40〜50%の時間で終わるので、Week 1後半に判断推理の苦手パターンだけ追加で1日割ける。
Week 2の専門8科目は1日1〜1.5科目のペース。憲法は1日、行政法は1日、民法は2日、ミクロ・マクロ経済はそれぞれ1日、政治学・行政学・財政学を1.5日でまとめる。配分は得意度で調整すれば良い。
基礎能力30問の中で「取りに行く問題」を決め切る
基礎能力試験は文章理解11問・数的処理16問・自然人文社会3問の構成、試験時間は140分。30問中21問を狙うなら、配点ではなく「正答率」で時間を寄せる発想に切り替える必要がある。
| 分野 | 出題数 | 目標正答 | 配分時間 | 戦術 |
|---|---|---|---|---|
| 現代文 | 6 | 5〜6 | 18分 | 全問正答狙い、最初に解く |
| 英文 | 5 | 3〜4 | 15分 | 接続詞と段落構造で絞る |
| 数的推理 | 5 | 2〜3 | 25分 | 易しい問から拾う |
| 判断推理 | 8 | 6〜7 | 40分 | ここで稼ぐ最重要分野 |
| 資料解釈 | 3 | 1〜2 | 20分 | 計算量で2問捨て候補 |
| 自然・人文・社会 | 3 | 1〜2 | 10分 | 時事と日本史で拾う |
| 見直し | — | — | 12分 | マークミス確認 |
文章理解は現代文6・英文5の構成で、現代文は全問正答を狙う領域だ。英文は単語が分からなくても接続詞と段落構造で選択肢を絞れる。文章理解で11問中9〜10問を取れれば、数的処理の取りこぼしを吸収できる。
数的処理16問の中で勝負所は判断推理8問。資料解釈3問は計算が遅い人ほど時間泥棒になりやすく、3問中1問だけ確実に取って残りは飛ばすのが定石。「判断推理8問のうち6〜7問、数的推理は5問中2問、資料解釈は3問中1問」と決め打ちで配分を組むと、本番で迷う時間が消える。
自然・人文・社会の3問は、時事と日本史・地理から1問取れれば十分だ。物理・化学・生物・地学は範囲が広すぎる割に1問しか出ないので、直前期に手を出す対象ではない。
専門択一40問で「選択8科目」をどう決めるか
専門択一は16科目から8科目を選んで40問解答する、試験時間は180分。憲法5・行政法5・民法10・ミクロ経済5・マクロ経済5・政治学5・行政学5・財政学5、この王道セットで40問を埋めるのが大多数の合格者の選択だ。
| 選択科目 | 出題数 | 安定度 | 直前期の伸びしろ |
|---|---|---|---|
| 憲法 | 5 | 高 | 過去問焼き直し率高め、確実な得点源 |
| 行政法 | 5 | 高 | 判例知識で安定、王道科目 |
| 民法 | 10 | 中 | 配点大だがヤマ次第 |
| ミクロ経済学 | 5 | 中 | 計算問題は型で対応 |
| マクロ経済学 | 5 | 中 | グラフと公式の暗記で2〜3問 |
| 政治学 | 5 | 中 | 人物と理論の対応暗記 |
| 行政学 | 5 | 中 | 政治学とセットで効率良 |
| 財政学 | 5 | 低 | 時事と絡む年は荒れる |
民法は総則・物権5問+債権・親族・相続5問の10問が出題され、配点比重が大きい代わりにヤマが当たらない年もある。逆に憲法と行政法は出題範囲が安定していて、過去問の焼き直しが多い。経済学2科目は得意なら稼ぎ頭、苦手なら捨ててもいいが、捨てる場合の代替は経営学・社会学・国際関係から選ぶことになる。
直前20日で選択科目を変えるのは原則NGだ。点が伸び悩んでいても、これまで積んできた8科目で27/40を狙う方が、新しい科目に乗り換えるよりずっと現実的な勝ち筋になる。本番では8科目分=40問にマークしつつ、自信のない問題は2択まで絞って勘で埋める判断を5分以内で下す訓練を、模試で繰り返しておくと当日のロスが減る。
直前期にやってはいけないこと
新しい参考書に手を出す、苦手科目に時間を集中投下する、夜更かしで生活リズムを崩す、模試の復習を放置する、時事を後回しにする、体調管理を後手に回す。この6つは「やってはいけないリスト」として手帳に書いておくレベルで意識した方がいい。
| NG行動 | 起きること | 代替策 |
|---|---|---|
| 新しい参考書 | 既知の解法が薄まる | 既に解いた過去問を回す |
| 苦手科目に集中 | 1問のために5科目分の時間ロス | 得意科目で1問上積み |
| 夜更かし | 本番午後の集中力低下 | 5/17から朝型シフト |
| 模試の復習放置 | 同じミスを本番で再現 | 翌日にミス問だけ再演 |
| 時事を後回し | 自然・人文・社会で1問落とす | 直前1週間で速攻の時事を2周 |
| 体調管理放棄 | 当日体調不良で全崩壊 | 1週間前から睡眠7時間死守 |
特に夜更かしは見落とされやすい。本試験は9:00開始の基礎能力140分→12:00専門択一180分という長丁場で、朝型に体を切り替えていないと午後の専門試験で集中力が切れる。試験2週間前から起床時刻を逆算して、5/31の9:00にピークが来る生活サイクルを作るのが地味だが効く。
時事は「速攻の時事」など定番の薄い本を1冊だけ、直前1週間で2周する。広く浅く触っておけば1問取れる確率が大きく上がる。
5/31試験当日と、即着手すべき二次対策
当日は基礎能力140分→専門択一180分の流れで、午後5時前後にLEC・TAC・大原が解答速報を出す。自分の自己採点が出揃ったら、当日中にブロック別ボーダー予想と照らし合わせる。
ここで重要なのが、自己採点でボーダー±5点圏内に入っていたら、翌6/1から二次試験対策に即着手することだ。一次合格発表は7月初旬、二次試験(専門記述+一般論文)は7月13日週、人事院面接は7月下旬〜8月中旬という流れで、一次合格を待ってから動き出すと面接対策が3週間しか取れない。
自己分析シート、志望動機、受験官庁の研究、これは5月のうちに種を蒔き、6月で骨格を作る前提のスケジュールだ。専門記述は憲法か行政法を主軸にして、1日1テーマで答案を書き溜めていくのが定石になる。
6/7地方上級・市役所A日程との併願者は、5月最終週で比重シフト
国家一般職と6月7日(日)の地方上級・市役所A日程を併願する受験者は、5/25〜5/31の最終週で学習比重を切り替える必要がある。
地方上級が教養型(東京都庁・特別区I類など)なら数的処理と時事の比重をさらに上げる。専門型(道府県庁・政令市)なら憲法・民法・行政法・経済学のオーバーラップ範囲が大きいので、国家一般職の準備がそのまま生きる。
| 併願先 | 5/25〜5/31の比重 | 6/1〜6/7の比重 |
|---|---|---|
| 教養型(特別区・都庁) | 国家一般職7:地方3 | 教養数的・時事に全振り |
| 専門型(道府県庁) | 国家一般職8:地方2 | 専門記述+論文に全振り |
| 市役所A日程 | 国家一般職9:地方1 | 教養+論文+集団討論 |
6/1〜6/7の7日間は、国家一般職の二次対策と地方上級の最終調整が同時並行になるので、二次対策の比重をどこまで割けるかが現実的な悩みどころになる。地方上級が第一志望なら6/7まで地方優先、国家一般職が第一志望なら6/1から二次に振るのが筋道だ。
9月開始の官庁訪問は、最終合格発表前から動く
国家一般職は最終合格=採用ではない。8月下旬の最終合格発表後、9月から官庁訪問(中央省庁・地方出先機関の採用面接)が始まり、ここで内々定を取って初めて採用が決まる。
人気官庁(財務省・経産省・金融庁・厚労省・国交省)は応募者の序列が早く形成されるので、最終合格発表を待ってから志望先を考えていると遅い。地方出先機関(法務局・労働局・税務署・地方整備局・運輸局)は採用枠が大きく、競争率も中央省庁より穏やかなので狙い目になる。
8月の人事院面接が終わった時点で、志望順位3〜5官庁に絞り込み、官庁ホームページの業務説明会・採用パンフレットを精読しておく。9月の動き出しでもたつくと、第一志望の官庁訪問日程に乗れないという落ち方がある。
予備校の直前パックを「使い分ける」発想
LECの直前パック(38,000円前後)、TACの公務員直前対策パック(45,000円前後)、大原の超直前パック(32,000円前後)、いずれも模試3〜4回+答練+時事資料がセットになっている。
| 予備校 | 直前パック | 単発模試 | 強み |
|---|---|---|---|
| LEC | 38,000円前後 | 5,000円 | 模試問題の本試験的中率に定評 |
| TAC | 45,000円前後 | 6,000円 | 時事Vテキストが充実 |
| 大原 | 32,000円前後 | 5,000円 | コスパ重視、地方校舎多い |
| 伊藤塾 | 50,000円〜 | 6,500円 | 法律科目の深掘り、論述対策 |
| アガルート | 通信特化 | 通信3,000円 | 自宅完結、振替視聴あり |
正直、20日前から新規入会で講義を受ける時間はない。模試だけ単発で受けに行く「模試ジプシー」戦略がコスト面でも時間面でも理にかなっている。LEC模試5,000円・TAC公開模試6,000円程度の単発受験で、本番形式に3回触れておけば十分だ。
独学派は「過去問500シリーズ(実務教育出版)」「新スーパー過去問ゼミ」「公務員試験 速攻の時事」の3点セットで本試験までの教材は揃う。直前20日で買い足すのは時事の本1冊と、試験会場に持ち込み可能なアナログ腕時計(秒針が静音タイプのものが望ましい、Casio MQ-24などが定番)、これくらいだ。
社会人転職組の20日プラン
平日フルタイム勤務しながら国家一般職を受ける社会人転職組は、可処分時間そのものが大学生の半分以下になる。逆算すると、平日3時間を確保するための「時間帯ブロック」が試験結果を左右する。
| 時間帯 | 用途 | 推奨内容 |
|---|---|---|
| 5:30〜7:00 | 朝学習(90分) | 専門択一の過去問(集中力ピーク帯) |
| 通勤往復 | 音声学習(60分) | 時事・憲法判例の音声講義 |
| 昼休み | 暗記(30分) | 行政学・政治学のキーワード暗記 |
| 帰宅後 | 復習(30〜60分) | 朝間違えた問題のミス問再演 |
土日は8時間×2日=16時間を模試と過去問に充てる。5/30(土)は会場入り前の調整日として午前に軽く復習、午後は完全休養に切り替える設計にすると、5/31当日に体力が残る。
有給休暇を取れるなら5/29(金)+6/1(月)の2日を確保し、試験前日の準備と試験翌日の自己採点+二次対策スタートに充てるのが理想形だ。年休2日でこの試験に向かう価値はある。
自己採点と一次合格発表までの30日間
5/31当日18時前後にLEC・TAC・大原の各社が解答速報をWebで公開する。基礎能力と専門択一の自分の点数を出し、各社の予想ボーダーと照合する。
| 自己採点 | 一次合格圏 | 行動 |
|---|---|---|
| 基礎能力25/30+専門30/40以上 | A判定 | 翌日から二次対策に全振り |
| 基礎能力21/30+専門27/40前後 | ボーダー圏 | 二次対策7割+官庁研究3割 |
| 基礎能力18/30+専門24/40以下 | 厳しい | 6/7地方上級にリソース集中 |
一次合格発表は7月初旬の人事院ホームページ公開。番号で確認した後、二次試験の専門記述+一般論文の試験会場・集合時刻が郵送通知される。この時点で受験官庁の業務説明会日程は公開済みなので、官庁ホームページのチェックを並行する。
二次面接の人事院面接は5段階評価(A〜E)で、Dは足切りに近い扱いになる。面接カードの提出は1次合格発表直後で、ここに何を書くかが面接全体の流れを決めるため、5月中に下書きを始めて6月で完成版を仕上げる前倒しスケジュールが安全圏になる。
残り20日を「失わないため」のチェックリスト
最後に、明日から実行できる項目を1つだけ挙げるなら、過去問の周回スケジュールを紙に書き出して机に貼ることだ。「5/11〜5/17 基礎能力5年×2周」「5/18〜5/24 専門8科目5年×1周」「5/25〜5/30 模試3回+ミス問」と、A4の真ん中に大きく書く。
| 日付 | やること(優先順位順) |
|---|---|
| 5/11〜5/17 | 基礎能力過去問・判断推理の苦手潰し・朝型シフト開始 |
| 5/18〜5/24 | 専門8科目過去問・経済学の計算問題回し・模試1回 |
| 5/25〜5/29 | 模試2回・時事2周・ミス問だけ再演 |
| 5/30 | 軽い復習(午前)+完全休養(午後)+受験票・腕時計・鉛筆HB準備 |
| 5/31 | 試験当日(9:00基礎能力→12:00専門→18:00自己採点) |
| 6/1〜 | 二次対策スタート(専門記述・一般論文・面接カード下書き) |
20日という期間は短く感じるが、平日3時間+休日8時間を死守できれば70時間取れる。70時間で1問でも上積みできる科目を見つけて、その1問のために残りを使う。それが残り20日のラストスパートで現実的に動かせる勝ち筋だ。
なお、本記事に記載した試験日程・ボーダー目安・科目構成は2026年5月11日時点の情報をもとにしている。最終的な試験要項・配点比重・合格基準は人事院公式サイト(jinji.go.jp)で必ず確認してほしい。