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高校無償化2026|所得制限撤廃で私立・公立どっちが得か

April 27, 2026
2 min read

中3の長子を持つ知人から「うちは年収1,100万くらいだから無償化は関係ないよね?」と聞かれて、いやそれが今年から関係あるんだ、と説明しはじめたら30分かかった。改正のニュースは流れたが、要するにいくら戻ってくるのかが伝わっていない。

2026年3月31日に改正法が成立し、4月1日から施行された。私立高校に通う世帯への所得制限が完全撤廃され、年45万7,200円を上限に就学支援金が出る。文部科学省の試算では、年収910万円以上の世帯で新たに約45万人、590〜910万円の中間層で約35万人、合わせて約80万人が今回新しく対象になった計算だ。

ただし「無償化」という言葉が一人歩きしているのも事実で、私立に通えば授業料がゼロになるわけではない。世帯年収・進学先の公私・授業料水準の3つで、自己負担額はかなり振れる。

改正の中身を一行で言えば

所得制限の完全撤廃と、私立支援額の引き上げ。この2点に尽きる。

これまで世帯年収910万円(目安、夫婦+子2人モデル)以上は支給対象外だった。それが消える。さらに私立向けの加算が上限39万6,000円から45万7,200円に引き上げられた。差額は約6万円。私立の年間授業料が60〜100万円という相場感を踏まえると、決して小さい上方修正ではない。

ちなみに国の制度なので全都道府県一律。都道府県独自の上乗せ補助はこれとは別枠で、合算できる地域もある。住んでいる場所で結論が変わる部分はそこだ。

たとえば東京都の私立高校等授業料軽減助成金は、都内在住で都内の私立に通う生徒を対象に最大47万5,000円を別枠で支給する。国の45万7,200円と合わせれば、年92万円までの授業料がカバーされる計算になり、都内私立のほぼ全校が事実上の無償圏内に入る。大阪府も同様の上乗せ制度を運用していて、府内私立は授業料の自己負担実質ゼロを目指している。一方、地方の県では独自上乗せがほぼなく、国の45万7,200円だけで戦う前提になる。同じ年収・同じ授業料でも、東京・大阪と地方では総支援額が年20〜40万円違う。これは無視できない地域差だ。

世帯年収別の支給額早見表

新制度で、誰がいくらもらえるか整理する。「子1人・両親共働き」のモデルで年収はざっくり世帯合算と読み替えてほしい。

世帯年収目安公立全日制私立全日制改正前との差
〜590万円11万8,800円45万7,200円私立で+6.1万円
590〜910万円11万8,800円45万7,200円公立も新規対象→+11.9万円
910万円〜11万8,800円45万7,200円全額が新規(これまで0円)

ポイントは2つ。年収910万円以上の層は、これまで1円も支援がなかったのが、私立なら年45万円超が一気に乗る。中間層(590〜910万円)も、公立分の支援が今回から新設された格好で、こちらも実質まるごとプラス。

公立に行った場合は実質ゼロが基本

公立全日制の授業料は年額11万8,800円(月額9,900円)で固定されており、就学支援金の支給額もそれにピタリと合わせてある。つまり公立を選ぶ限り、世帯年収にかかわらず授業料そのものはゼロで通せる。

ただし「授業料がゼロ=お金がかからない」ではない。教科書代、副教材、修学旅行積立、PTA会費、制服、部活遠征費。公立でも年間20〜30万円は雑多に出ていく。このあたりは後段の奨学給付金パートで触れる。

入学初年度に限れば、制服15〜20万円・教科書と副教材5〜8万円・体操着とジャージ3万円・通学定期(自宅から30分圏)年間8〜12万円ほどがまとめてかかる。3年間の総額で見ると、公立でも100〜120万円は授業料以外で消えていく計算だ。「公立だから安い」と思っていた家庭が、入学準備で20万円超のまとまった現金が必要になることに焦るパターンは毎年起きている。

私立に行った場合の実質負担シミュレーション

ここからが本題で、実際に私立に進学した場合に手元から出ていくお金を見ていく。授業料を3パターンに置いて、年45万7,200円の支援を差し引いた残りが実質負担だ。

私立の年間授業料支援額自己負担(年)月換算
60万円45万7,200円14万2,800円約11,900円
80万円45万7,200円34万2,800円約28,600円
100万円45万7,200円54万2,800円約45,200円

授業料60万円台の私立(地方の中堅校に多い)なら、月1万円ちょっとで通えてしまう。一方、首都圏の中高一貫進学校で授業料100万円コースだと、支援を受けても月4.5万円が3年間続く。総額で約163万円。

ここに施設費(年10〜30万円)、入学金(20〜30万円)、修学旅行(15〜20万円)が乗ってくるので、私立の実総額は支援後でも200万円台中盤〜後半というのが現実的なラインだろう。

3年間トータルで具体化してみる。授業料80万円・施設費20万円・入学金25万円・修学旅行20万円の中堅私立を仮定すると、改正前(支援なし)は3年で約325万円。新制度の支援を満額受けると約188万円。差し引き137万円が戻ってくる計算で、ちょうど大学入学初年度の費用に充てられるレベルだ。改正前から年収帯で支援を受けていた家庭は約20〜25万円の上乗せだが、年収910万円超の世帯にとってはまるごと137万円の純増。つまり同じ私立に通っても、家計のキャッシュフローインパクトは世帯によって大きく違う。

通信制を選ぶときの注意点

私立通信制の支援上限は年33万7,000円。全日制の45万7,200円より約12万円低い。これは通信制が単位制で授業料計算が異なるからで、年間履修単位数によって実際の支給額はもっと下がるケースもある。

「全日制が合わなくて通信制に切り替えたい」というニーズは増えているが、無償化の恩恵は全日制ほどフラットではない。通信制サポート校(N高、第一学院、クラーク記念国際など)は学費の構成が学校ごとにかなり違うので、就学支援金で実際にカバーされる比率を入学前にもらえる金額ベースで個別に確認しておくこと。

申請手続き - マイナポータル連携が事実上の主流に

申請は入学先の高校経由で行う。4月の入学直後に「就学支援金受給資格認定申請書」が配られ、それに保護者の所得情報を添付する流れだ。

最近はマイナポータルを使った課税情報の自動連携(オンライン申請)が増えており、書類で課税証明書を取り寄せる手間が省ける。マイナンバーカードと、保護者全員(共働きなら2人分)の情報連携同意が必要なので、入学前の3月末までにマイナポータルにログインできる状態にしておくとスムーズだ。

落とし穴が1つあって、所得判定は前年(=2025年)の住民税課税情報がベース。例年6月頃に切り替わる。4月入学時点では2024年分のデータで仮認定し、6月以降に正式認定で再判定される。年度途中で世帯年収が大きく変動した場合(失業、復職、独立など)は、家計急変支援の制度があるので学校事務に相談すること。黙っていると損をする。

もう1点、共働き世帯の所得判定は「両親の課税標準額(または市町村民税の所得割額)」を合算する仕組みになっている。今回の改正で所得制限自体は撤廃されたが、私立の加算額(上限の45万7,200円が満額出るかどうか)については引き続き所得段階を見て判定される運用が残る。具体的には、夫婦合算で課税所得590万円相当を境に減額計算がかかる。フリーランスや個人事業主で青色申告控除65万円を使っている家庭は、所得基準が会社員の年収換算と微妙にズレるので、確定申告書の所得金額欄を実際にチェックしてほしい。

授業料以外の出費 - 高校生等奨学給付金との合わせ技

授業料がゼロになっても、教科書・修学旅行・制服・PTA会費は残る。これに対応するのが高校生等奨学給付金で、生活保護世帯または住民税所得割非課税世帯が対象。年額で公立全日制の第1子5万2,600円から、私立全日制の第2子以降15万2,000円まで段階的に支給される。

就学支援金とは別制度で、申請窓口も都道府県(住民票のある自治体)。両方もらえる世帯は、必ず両方申請しておく。学校側から自動で案内されないケースもあるので、住民税非課税ラインに近い世帯は4月のうちに自治体の教育委員会に確認するのが安全だ。

このほか、自治体によっては独自の入学準備金貸付(無利子・卒業後返済)や、給食費・修学旅行費の補助、通学定期代助成を運用している。「うちの自治体には何があるか」を一度総ざらいしておくと、3年間で10〜30万円の上積みが見つかることがある。市区町村のウェブサイトで「就学援助」「教育委員会 給付」などで検索するか、入学先の事務担当に直接聞いてしまうのが早い。

兄弟姉妹がいる多子世帯の影響

子どもが2人・3人いる世帯では、教育費総額のインパクトはさらに大きい。2人とも私立に通うケースで考えてみる。授業料80万円の中堅私立に2人・3年同時在学(下の子が高1のときに上の子が高3など、1〜2年の重複)があると、改正前なら2人分で年間160万円の授業料が丸ごと自己負担。新制度なら年90万円超(45万7,200円×2)が支援で戻る。

さらに大阪府のように「3人以上の多子世帯は所得制限なしで授業料完全無償」を独自運用している自治体もあり、子の人数で制度の組み合わせが変わる。多子世帯ほど制度を丁寧に組み合わせる価値が大きい。第3子以降の住民税軽減など他制度との合わせ技で、年30〜50万円さらに上積みできる可能性もある。

中学受験を検討している家庭は試算を組み直すべきか

新制度の影響が最も大きいのは、実は今これから中学受験を考える小学校高学年の家庭かもしれない。中高一貫私立を選ぶか公立中→公立高に進むかは、最終的に教育費総額で判断する家庭が多い。

仮に中高一貫私立(中学3年・高校3年で合計6年)で授業料が一律80万円とすれば、改正前は6年で480万円が丸ごと自己負担。今回の改正で高校3年分(240万円)のうち約137万円が支援で相殺されるので、6年総額は343万円まで下がる。月割りすると約4.8万円。これに塾代を加味しても、共働き年収1,000万円世帯なら現実的な射程に入ってくる水準だ。

「私立は無理」と最初から外していた家庭は、中学受験塾の説明会に行く前に、自分の家の年収でいくらの支援が出るかを試算しておくと、選択肢が一段増える。

ただし中学受験塾の費用は別腹で、小4から小6まで3年間で200〜300万円が相場。中高一貫私立の高校3年分の支援(約137万円)は、中学受験塾代に消えてしまうレベルでもある。教育費総額で言えば「公立中→公立高→塾なしで受験」が最も安いことに変わりはなく、新制度はあくまで「私立も視野に入る世帯が増えた」程度の効果と捉えるのが現実的だろう。

3年間の総額で見る、公立 vs 私立の損益分岐点

授業料だけ見ていても判断を誤る。施設費・入学金・修学旅行・通学費を含めた3年間総額で並べてみる。年収910万円超の世帯(改正前は支援ゼロだった層)を想定したケースで比較する。

費目公立全日制私立(中堅・授業料60万)私立(進学校・授業料100万)
入学金5,650円25万円30万円
授業料(3年計)35万6,400円180万円300万円
国の就学支援金-35万6,400円-137万1,600円-137万1,600円
都の上乗せ(東京の場合)0円-120万円(満額時)-142万5,000円(満額時)
施設費・PTA等(3年)15万円60万円90万円
教科書・副教材(3年)18万円25万円30万円
修学旅行・行事費18万円25万円35万円
制服・体操着12万円18万円22万円
通学定期(3年)30万円35万円40万円
3年実総額(東京想定)約63万円約111万円約267万円
3年実総額(地方想定)約63万円約231万円約410万円

東京・大阪のように上乗せ補助が手厚い地域では、中堅私立(授業料60万円台)の3年総額は約110万円まで圧縮される。公立(約63万円)との差は3年で50万円弱。月割りで約1.4万円の差で私立を選べる計算だ。地方ではこの差が一気に広がり、3年で170万円ほどの差になる。

「公立か私立か」は教育方針の問題であって金額だけでは決まらないが、家計に与えるインパクトを正しい数字で押さえておかないと、制度をフルに活かしきれない。志望校を絞り込む前に、自分の住む自治体の独自上乗せ制度を必ずチェックしてほしい。

主要都道府県の独自上乗せ制度の差

国の45万7,200円に加えて自治体が独自に上乗せする額は、住んでいる場所で大きく差がつく。代表的な自治体の運用を整理する。

自治体私立向け上乗せ上限国と合計主な所得要件
東京都47万5,000円92万円都内在住・段階的所得要件あり
大阪府約20〜35万円65〜80万円府内在住・3人以上世帯で手厚く
神奈川県約17万円約62万円県内在住・所得段階あり
千葉県約17万円約62万円県内在住・所得段階あり
愛知県約12万円約57万円県内在住
福岡県約9万円約54万円県内在住
北海道約3万円約48万円道内在住
沖縄県上乗せほぼなし約45万円国の制度のみ

東京都の場合、年収約910万円までの世帯なら国+都の合計で年92万円までカバーされる。授業料90万円台の有名私立でもほぼ授業料ゼロで通える計算だ。一方、地方の県では国の上限がそのまま天井になる。同じ私立を選んでも、住んでいる県で年30〜40万円・3年で90〜120万円の差が出る。引っ越しで「学費が重い県から軽い県へ」という選択肢を持ち出すほどの規模ではないが、新築物件の選び方で都内に踏みとどまるか郊外に出るかを決める家庭にとっては、教育費の地域差は無視できない要素だ。

なお、上乗せ制度は自治体ごとに毎年見直しがあり、表の数字は2026年度時点。最終的には各都道府県の教育庁ウェブサイトで「私立高校 授業料軽減 補助 2026」と検索して最新の支給額表を確認してほしい。

申請でやりがちな失敗パターン

実際に支給ロスを生むのは、制度の中身よりも申請ミスのほうだ。よくある落とし穴を整理しておく。

  • マイナポータル連携の同意忘れ: 共働きの場合、保護者2人とも情報連携に同意しないと所得判定ができず、仮認定のまま正式認定が遅れる。下手をすると秋口まで支給が止まる。
  • 入学直後の申請書類提出漏れ: 入学式後の数日間に配られる書類が10種以上あり、就学支援金申請書がその中に紛れる。提出期限(おおむね4月中旬)を逃すと、4〜6月分の支給が翌月以降にまとめてズレ込むケースがある。
  • 転校・転居時の再申請忘れ: 都道府県をまたぐ転校では支援金の取り扱いが変わる。転入先の高校で再申請が必要だが、本人・保護者ともに失念しやすい。
  • 私立の特進コース・国際コースの追加授業料: 特待制度がない限り、上限45万7,200円を超えた授業料部分は満額自己負担。コース選択前に「支援金で何割カバーされるか」を学校事務に確認しておく。
  • 奨学給付金の申請忘れ: 就学支援金とは別申請で、自治体への直接申請。住民税非課税ラインに近い世帯は、年5〜15万円もらえるはずの給付金を見逃すことが多い。

特に共働きでマイナンバー連携をしていない世帯は、4月のうちにマイナポータルで「e-私書箱」と「住民税情報提供」の同意を済ませておくと、書類でのやり取りがほぼ要らなくなる。

よくある誤解と正しい理解

新制度をめぐっては、SNSや知人からの伝聞で誤った理解が広がりやすい。代表的な誤解を整理する。

誤解実際
「私立も完全無償化された」上限45万7,200円まで。授業料が60万を超える私立は差額自己負担
「年収910万以上は今もダメ」2026年4月から所得制限完全撤廃で全世帯対象
「申請しなくても自動でもらえる」入学先の高校経由で申請必須。提出しないと0円
「公立なら何も払わなくていい」授業料は0でも教科書・修学旅行・制服で年20万円超
「奨学給付金と就学支援金は同じ」別制度。両方申請しないと給付額が10〜30万円落ちる
「3年生で受験するなら関係ない」在校中の支援なので、新2年・新3年も追加分が今年から増える
「都の上乗せは国の制度の一部」別申請。学校経由とは別ルートで都に直接申請が必要
「マイナンバーがないと使えない」紙の課税証明書でも申請可。ただし手間と時間が大幅に増える

最後の項目だけ補足すると、マイナンバーカードを持っていない世帯でも従来通り紙ベースの申請はできる。住民票のある市区町村で課税証明書(両親分)を取得して、入学先の高校に提出する流れ。手数料は1通300〜400円程度で、共働きなら2通必要になる。マイナポータル連携と比べると2〜3週間ほど認定が遅れることが多いので、4〜5月の家計が一時的に苦しくなる可能性がある点だけ覚えておきたい。

高専・専修学校・外国人学校など他校種の扱い

「高校無償化」と一括りに言われるが、対象校種は意外に細かく分かれている。

  • 高等専門学校(高専): 1〜3年生は就学支援金の対象。授業料は国立で年23万4,600円、支援額は11万8,800円(公立全日制と同額)で、差額の約11万円は自己負担になる。私立高専はほとんどないので実務上の影響は小さい。
  • 専修学校高等課程(高等専修学校): 対象。私立加算の上限45万7,200円が適用される。理容・美容・調理・看護准看などの実学系3年制コースに進む生徒は、ここを正しく選択しないと支援対象外と勘違いして申請を出さないケースがある。
  • 各種学校扱いの外国人学校: 朝鮮学校を除き、文部科学省が指定したインターナショナルスクールや外国人学校の高等部は対象。指定校リストは年1回更新されるので、入学前に必ず最新版を確認したい。
  • 通信制サポート校: サポート校自体は学校教育法の高等学校ではないため対象外。連携先の通信制高校(N高なら角川ドワンゴ学園)経由で支給を受ける構造になっている。サポート校の独自費用(年30〜80万円)は支援対象に含まれない。
  • 海外の高校に在学中の生徒: 国内法に基づく高校ではないため対象外。1年間の交換留学で日本の高校に籍を残しているケースは、原籍校経由で継続支給される。

進学先が一般的な全日制公立・私立から外れる場合は、入学願書を出す前に「就学支援金の対象校か」を学校事務に直接確認するのが確実だ。

1年間の申請カレンダーと家計タイミング

新3年生・新2年生の在校生も含めて、年間で押さえるべき手続きの節目を整理する。

時期アクションポイント
入学前年12〜2月マイナポータル登録・情報連携同意共働きは保護者2人とも要対応
4月上旬受給資格認定申請書を学校に提出入学式後10日以内が目安
4月中旬〜5月仮認定で支給開始前年度の課税情報ベース
6月下旬〜7月正式認定で支給額が確定当年6月切替の住民税情報を反映
7月初旬高校生等奨学給付金の申請受付自治体に直接申請、別ルート
12月〜翌1月家計急変時の臨時申請受付失職・廃業・離婚時はここで救済
翌3月進級時の継続意思確認1年生→2年生への切り替えで再書類

例年6月の正式認定で支給額が変動する世帯が一定数いる。前年(2025年)に一時的にボーナスや退職金で年収が跳ねていた家庭は、6月の切り替えで支給区分が下がるケースがあるため、4〜5月の段階で「6月以降に減額の可能性あり」と家計に織り込んでおきたい。逆に、転職や育休復帰で前年所得が低めだった家庭は、6月以降に支給額が上振れる場合もある。

制度の持続性と将来の見直しリスク

少し冷ややかな話もしておきたい。今回の改正で年間およそ4,000億円規模の追加財源が必要になると見積もられており、その原資は国債や他の社会保障費の見直しから捻出されている。今後5〜10年で消費税率や所得税率の議論と絡めて見直しが入る可能性はある。「2027年度入学組」までは現行水準の支援が続く前提で計画して問題ないと思うが、その先は支援額が微減・微増のどちらにも振れうる。あくまで「2026年4月時点の制度はこうだ」という認識で家計を組んでおく姿勢が安全だ。

加えて、私立側の授業料引き上げ動向も注視したい。国の支援が増えると、それを織り込んで私立校が授業料を上げる「便乗値上げ」のリスクは過去の制度拡充時にも観測されている。志望校の過去5年分の授業料推移を一度確認しておくと、3年間の総予算組みの精度が上がる。

ふるさと納税・iDeCoとの間接的な関係

意外と知られていないが、所得控除の使い方によって就学支援金の判定額が変わる可能性がある。所得制限自体は撤廃されたものの、私立加算の満額判定(課税所得590万円目安)については引き続き所得段階で判定される運用が残るためだ。

具体的には、iDeCoの掛金は全額所得控除になるため、課税所得を直接押し下げる。月2.3万円(会社員上限)を1年掛け続ければ、年間27.6万円の所得圧縮効果。これによって就学支援金の判定区分がワンランク有利になる世帯が出てくる。ふるさと納税は寄附金控除なので所得控除ではなく、就学支援金の判定額にはほぼ影響しない(住民税の税額控除に効く)。

教育費の負担を減らす観点で家計を組み直すなら、「ふるさと納税で住民税を減らす」よりも「iDeCoで課税所得を減らす」ほうが、就学支援金判定との相性は良い。もちろんiDeCoは原則60歳まで引き出せない資金なので、流動性とのトレードオフは別途考える必要がある。

中学生・高校生のいる家庭では、月2.3万円のiDeCo拠出が10年・20年単位で200〜400万円規模の老後資産につながる試算もある。教育費が落ち着いた40代後半から本格化させる選択肢もあるが、複利の効果を考えれば30代・40代前半から細く長く積み立てておくのが結果的に合理的だ。新NISAも併用して、年間120万円の積立投資枠を埋めることを目標に置くと、教育費・老後資金・流動性の3つを同時に走らせやすい。

結局、新制度をどう活かすか

来年(2027年度)から高校生になる中2のお子さんがいる家庭は、進路の選択肢を再計算するタイミングだ。これまで「私立は予算的に無理」と諦めていた世帯でも、私立60万円コースなら月1万円台で射程に入る。一方、年収910万円以上で「うちは関係ない」と思っていた家庭も、年45万円分の現金が浮く計算になるため、その分を学資保険や塾代に振り直す余地が生まれる。

進学相談会の前に一度、志望校の年間授業料と施設費を表に書き出して、新しい支援額を引き算してみてほしい。3年間の総額で見ると、想像していた進学コストより100万円以上低くなっている学校が、案外あるはずだ。

最後にもう1つだけ。今回の改正で年間最大45万7,200円が国費から私立進学世帯に流れるということは、家計に浮いたお金をどこに振り直すかが新しいテーマになる。塾代や予備校(高2〜3で年30〜80万円)、留学積立、家族の保険見直し、親自身の老後資金(iDeCo・新NISAの拡充)など、選択肢は多い。「無償化で得した」で終わらせるのではなく、3年間で約140万円が手元に残る前提で、家計の中期計画を組み直すきっかけにできれば、この制度改正は本当の意味で家庭に効いてくるはずだ。