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子ども・子育て支援金、年収別の天引き額を計算した

April 21, 2026
2 min read

給与明細に見覚えのない項目が増えた

2026年5月の給与明細を開いて、「子ども・子育て支援金」という項目に気づいた人は多いだろう。4月分の社会保険料から徴収が始まったため、翌月控除の会社では5月の手取りに初めて影響が出る。

金額自体は 数百円にすぎない。ただ 「これは一体 何の項目なのか」「独身なのに なぜ子育て支援金を払うのか」「来年以降 もっと増えるのか」——疑問が次々と湧いてくる。特に 手取りが減ったことに敏感な人にとっては 無視できない変化だ。

この記事では 年収帯ごとの具体的な負担額を計算しつつ、2026年度に同時に実施された 健康保険料率の引き下げとの差し引きで 実質いくらの負担増になるのかを明らかにする。さらに 2028年度までの段階的な料率引き上げスケジュールと 将来の負担見通しも含めて整理した。

そもそも何の財源なのか

子ども・子育て支援金は、2024年に成立した「子ども・子育て支援法」の改正に基づく新しい拠出金だ。こども家庭庁が打ち出した「加速化プラン」の財源にあたる。加速化プランの中身は多岐にわたるが、代表的なものを挙げると——児童手当の所得制限撤廃と高校生への延長、こども誰でも通園制度の創設、育児休業給付率の引き上げといった施策群だ。これらをまとめて年間3.6兆円規模で実施する計画のうち、約1兆円分をこの支援金で賄う。

仕組みとして重要なのは、これは税金ではなく社会保険料の一種だという点。既存の健康保険制度に上乗せする形で集める。会社員なら給与天引き、自営業者やフリーランスなら国民健康保険料に加算される。被用者保険の場合は労使折半なので、天引き額と同額を会社も負担している。

なぜ税金ではなく 社会保険料なのか。政府の説明は 「医療保険は全世代が加入しており、幅広い世代で子育てを支えるのに適した仕組み」というものだ。一方で 「税方式にすると増税の議論が必要になるため、社会保険料に紛れ込ませた」という批判も根強い。

実際のところ 給与明細の控除項目が1行増えるだけなので 気づかない人もいるだろう。国会での審議を経ずに料率を変更できる社会保険料は 政府にとって扱いやすい財源だが、その分 国民の目が届きにくい側面もある。だからこそ 自分がいくら払っているのか 把握しておく意味がある。

年収別の月額負担はいくらか

2026年度の支援金率は0.23%(被用者保険の場合)。標準報酬月額にこの率を掛け、労使で折半した金額が毎月の天引き額になる。賞与からも同率で徴収される。

年収月額の本人負担(目安)年額の本人負担(目安)
300万円約290円約3,500円
400万円約385円約4,600円
500万円約480円約5,750円
600万円約575円約6,900円
800万円約770円約9,200円
1,000万円約960円約11,500円

年額の目安は「年収 × 0.23% ÷ 2」で概算できる。実際には標準報酬月額の等級表に当てはめるため端数は多少ずれるが、大きくは外れない。

なお、賞与からも同率で徴収される点を見落としがちだ。標準賞与額(賞与額の千円未満切り捨て)に0.23%を掛けて折半した金額が、賞与支給時に別途控除される。たとえば夏のボーナスが50万円なら、500,000 × 0.0023 ÷ 2 = 575円が追加で引かれる。月額と合わせた年間トータルが上の表の「年額」に近い数字になる。

年収500万円の会社員で 月480円程度。この金額だけ見ると 大した負担ではないように思える。だが 問題は この金額が初年度の水準にすぎないということだ。2028年度には 約1.7倍の料率に引き上げられる見込みで 負担額は年々増えていく。

健保料率の引き下げで相殺されるのか

「支援金が増えても、健康保険料率が下がったから実質変わらない」という説明を見かけるが、本当だろうか。

2026年度、協会けんぽの医療分保険料率は10.00%から9.90%に引き下げられた。0.10ポイントの引き下げだ。一方、支援金率は0.23%の新規追加。差し引きすると0.13ポイントの純増になる。

具体的に年収500万円で見てみる。

  • 健保料率引き下げによる減額: 標準報酬月額 × 0.10% ÷ 2 ≒ 月205円の負担減
  • 支援金の新規負担: 月480円の負担増
  • 差し引き: 月275円の純粋な負担増

完全には相殺されない。「健保が下がったから大丈夫」は正確ではなく、約6割は相殺されるが残り4割は純粋な手取り減少だ。

ただし、この計算は協会けんぽの場合。組合健保に加入している人は、各組合の保険料率変更幅によって結果が異なる。IT系の大手健保組合の中には保険料率を据え置きにしたところもあり、その場合は支援金0.23%がまるごと純増になる。逆に、保険料率を0.2ポイント以上引き下げた組合なら、ほぼ相殺される計算だ。

年収帯ごとに「差し引き後の純負担増」を整理すると以下のようになる(協会けんぽの場合)。

年収支援金の本人負担健保引き下げ分差し引きの純負担増
300万円約290円/月約125円/月約165円/月
500万円約480円/月約205円/月約275円/月
800万円約770円/月約325円/月約445円/月

自分の健保組合の2026年度料率を確認しておきたい。組合のウェブサイトか、総務部門への問い合わせで確認できる。

2028年までにどこまで上がるのか

支援金率は段階的に引き上げられる。こども家庭庁が示しているスケジュールはこうだ。

年度支援金率(被用者保険)制度全体の徴収規模
2026年度0.23%約0.6兆円
2027年度引き上げ(詳細未定)約0.8兆円
2028年度約0.4%程度約1.0兆円

2028年度には現在の約1.7倍の料率になる見込み。年収500万円の会社員なら、月480円が月800円前後に増える計算だ。年額にすると約1万円。決して無視できない金額ではない。

ただ、2027年度・2028年度の具体的な支援金率はまだ正式決定されていない。徴収規模の目標から逆算した推計値であり、実際の経済状況や出生率の推移によって変動する可能性がある。

2028年度に支援金率が0.4%になった場合の年収別負担額も試算しておく。

年収2026年度(0.23%)2028年度(0.4%想定)増加額
300万円約290円/月約500円/月+210円
500万円約480円/月約835円/月+355円
800万円約770円/月約1,335円/月+565円

年収800万円の人は、2028年度には月1,300円超の天引きになる。年額で約16,000円。この負担増が健保料率のさらなる引き下げで相殺されるかは、その時点の医療費動向次第だ。楽観はしない方がいい。

独身でもパートでも全員が対象

「子ども・子育て支援金」という名称から、子育て世帯だけが関係する制度だと思いがちだが、実態は違う。

独身者も、子どものいない夫婦も、全被保険者が対象だ。 健康保険に加入している限り 年齢や家族構成に関係なく徴収される。20代の独身会社員であっても 70歳未満の被保険者であれば 等しく支援金を負担する。SNSで「独身税」と揶揄される所以は ここにある。

この点について 政府は「少子化は 独身者を含む 社会全体の課題であり、全世代で支える仕組みが必要」と説明している。理屈は わからなくもないが、自分には直接関係のない給付の財源を 毎月の給与から天引きされることに 抵抗を感じる人がいるのも 当然だろう。

パート・アルバイトについても、社会保険に加入している人は対象になる。2024年10月から従業員51人以上の企業で短時間労働者の社会保険適用が拡大されたため、月収8.8万円以上で週20時間以上働くパートも支援金の徴収対象になりうる。

逆に、配偶者の扶養に入っていて自分では社会保険料を払っていない人(第3号被保険者)は、直接の負担はない。ただし、扶養者(配偶者)の支援金にその分が含まれているとも言えるので、世帯全体で見れば負担はしている。

国民健康保険に加入している自営業者・フリーランスの場合は仕組みが少し異なる。労使折半がないため全額が自己負担になるが、支援金率自体は被用者保険より低く設定されている。年収300万円の国保加入者で月額650円程度という試算がある。国保は自治体ごとに保険料の計算方法が異なるため、正確な金額は自治体の通知を確認する必要がある。

子育て世帯が受け取る側のメリット

負担する側の話ばかりしたが、この財源で何が賄われるのかも見ておこう。

  • 児童手当の拡充: 所得制限の撤廃、高校生まで延長(月1万円)、第3子以降は月3万円
  • こども誰でも通園制度: 親が働いていなくても保育を利用できる制度の創設
  • 育児休業給付の引き上げ: 両親ともに育休を取得した場合、実質手取り10割相当に
  • 出産費用の保険適用: 2026年度中に具体化を検討中

子育て世帯にとっては、支払う支援金よりも受け取る給付の方が大きくなる設計になっている。たとえば児童手当だけでも、子ども1人あたり0歳〜高校卒業まで合計約200万円が支給される。第3子以降は月3万円に増額されるため、さらに差は広がる。

一方で 独身者や 子どものいない世帯にとっては 純粋な「出ていくだけ」の拠出だ。これを 社会全体で子育てを支える仕組みと見るか、世代間の不公平と見るかは 個人の価値観による。

ただ 一つだけ指摘しておきたいのは、この制度がなかった場合の代替財源は 結局 税金か国債になるということだ。消費税の引き上げや 所得税の増税で賄うことになれば、それはそれで全国民が負担する。財源の取り方が変わるだけで 負担そのものは消えない。この前提を踏まえた上で 制度の是非を判断した方が 建設的だろう。

自分の天引き額を正確に確認する方法

概算ではなく正確な金額を知りたい場合、手順は簡単だ。

  1. 給与明細で標準報酬月額を確認する(わからなければ総務・人事に聞く)
  2. 標準報酬月額 × 0.23% ÷ 2 = 月額の本人負担

たとえば標準報酬月額が320,000円なら、320,000 × 0.0023 ÷ 2 = 368円。これが毎月の天引き額だ。

標準報酬月額がわからない場合は、毎年9月頃に届く「標準報酬決定通知書」を確認するか、ねんきんネットにログインすれば直近の等級が表示される。給与の額面と標準報酬月額は必ずしも一致しないので、正確に計算したいなら等級表との突き合わせが確実だ。

育休中や産休中の人は どうなるのか

育児休業中や産前産後休業中の社会保険料は 従来から免除されてきた。子ども・子育て支援金も 社会保険料の枠組みで徴収されるため、同様に免除の対象になる。育休を取る側にとっては この点は安心材料だろう。

免除されるのは「被保険者本人の負担分」だけではない。「事業主の負担分」も含めて全額が免除される。育休中は 支援金の負担がゼロになり、復帰後に遡って徴収されることもない。

ここで 一つ興味深い構図が見えてくる。育休中の人は 支援金を払わずに 加速化プランの給付(育児休業給付の引き上げなど)を受ける。一方 独身の会社員は 支援金を払い続けるが 給付を受ける場面がない。制度としては 社会全体で子育てを支えるという建前だが、負担と受益のギャップは 正直に言って 大きい。

介護保険料との関係も 整理しておく

40歳以上の人は 健康保険料に加えて 介護保険料も天引きされている。2026年度の 協会けんぽの介護保険料率は 1.62% で、前年度の 1.59% から 0.03ポイント 引き上げられた。

つまり 40歳以上の会社員は 2026年4月から 「健保料率の引き下げ」「介護保険料率の引き上げ」「支援金の新設」という 3つの変更が同時に起きている。年収500万円の 40代会社員の場合で 差し引きすると 月340円程度の負担増になる。健保料率の引き下げだけを見て 「相殺されるから大丈夫」と考えるのは 片手落ちだ。社会保険料のトータルで 手取りへの影響を把握する必要がある。

さらに 厚生年金保険料率(18.3%)は 2017年から据え置きが続いているが これも将来的に 引き上げの議論が出てくる可能性はある。社会保険料の負担率は じわじわと上がり続けているのが 現実だ。2003年の会社員の社会保険料負担率と 2026年のそれを比較すると 約5ポイント上昇している。支援金は その流れの最新の一手にすぎない。

5月の給与明細で 確認すべきこと

5月の給与明細が届いたら 以下の3点を確認しておきたい。

  1. 「子ども・子育て支援金」の欄が あるか — 会社によっては 健康保険料に内包して表示することもある。項目が見当たらない場合は 健保料の増額分に含まれている可能性がある。人事や総務に 「支援金は内訳表示されるか」と聞いてみるといい
  2. 天引き額が 上の試算と大きく離れていないか — 標準報酬月額から逆算した金額と比べることで 給与計算の誤りに気づけることがある。特に 今回のように新項目が追加されたタイミングは システム設定のミスが起きやすい
  3. 健康保険料率が 2026年度の新料率に切り替わっているか — 3月分の保険料から新料率が適用される。翌月控除の会社なら 4月給与から反映されているはずだが、切り替えが遅れている場合は 過去分の精算が発生する

数百円の天引きを 気にしないという人もいるだろう。だが この支援金は 2028年度までに 約1.7倍に増える。年収800万円なら 月770円が 月1,300円超になる。給与明細の新しい1行を スルーせず 仕組みを理解しておくことを勧める。来年・再来年の増額時に 「また増えた」と慌てなくて済む。

よくある疑問

Q. 転職した場合、支援金は二重に取られるのか

取られない。支援金は健康保険料と一体で徴収されるため、転職で保険者が変わっても月単位で切り替わる。退職月と入社月が同じなら、新しい勤務先の健保から徴収される。ただし退職から再就職まで間が空いて国保に加入した場合は、国保側の支援金率(被用者保険とは異なる)が適用される。

Q. 支援金の使い道は自分で確認できるのか

こども家庭庁が毎年度の予算配分と執行状況を公表している。「子ども・子育て支援勘定」の決算書で、児童手当・通園制度・育休給付などへの配分割合を確認できる。ただし個別の天引き額がどの施策に使われたかまでは追跡できない。

Q. 将来的に料率が0.4%以上に上がる可能性はあるか

現時点では2028年度の約0.4%が当面の上限とされている。ただし少子化対策の追加施策や出生率の想定を下回る推移があれば、料率の再引き上げが議論される可能性は否定できない。社会保険料の料率変更は国会の議決を経ずに実施できるため、変更のハードルは税金よりも低い。

Q. 確定申告で支援金の負担を取り戻せるか

支援金は社会保険料の一部として天引きされるため、社会保険料控除の対象に含まれる。年末調整で自動的に控除されるので、確定申告で別途手続きする必要はない。ただし「控除される」のと「取り戻せる」のは別の話だ。控除によって所得税・住民税が多少軽くなるが、支援金そのものが還付されるわけではない。年収500万円の場合、支援金の年額約5,750円に対して、控除で軽減される税額は1,000円程度にすぎない。