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iDeCoとNISAどっちを優先すべきか

April 20, 2026
2 min read

「両方やるべき」では答えにならない

iDeCoとNISA、どちらも税制優遇のある資産形成制度だ。どちらも使った方がいい——それは正しいが、月の投資予算が3万円しかない人にとっては何の助けにもならない。

問題は「どちらを先に埋めるか」だ。この答えは年収・職業・年齢・退職金の有無で変わる。証券会社の記事は自社口座の開設に誘導したいので、この判断材料を整理してくれることは少ない。だから自分で計算するしかない。

本記事では、会社員とフリーランスそれぞれのケースで、月3万円・5万円・10万円の予算別にiDeCoとNISAの最適な配分を示す。数字で比較すれば、どちらを優先すべきかは自然に見えてくる。

iDeCoとNISAの根本的な違い

まず、この2つは税制優遇の仕組みがまったく違う。ここを正確に理解していないと、配分の判断を間違える。

項目iDeCo新NISA
税制メリット掛金が全額所得控除運用益が非課税
拠出時の節税あり(所得税+住民税が減る)なし
運用益の課税受取時に課税される完全非課税
引き出し原則60歳まで不可いつでも可能
年間上限職業により1.4万〜6.8万円/月360万円/年(つみたて120万+成長240万)
生涯上限なし(拠出年数で決まる)1,800万円

ここで押さえるべき構造はシンプルだ。

iDeCoは「今の税金を減らす」制度。掛金を出した年の所得税と住民税が安くなる。ただし受取時に退職所得税や雑所得税がかかるので、節税ではなく「課税の繰り延べ」に近い面がある。それでも、多くの人にとっては受取時の税率の方が低くなるため、結果的に得をする。

NISAは「将来の利益に課税しない」制度。投資で得た利益に通常かかる20.315%の税金がゼロになる。出す時にも税金はかからない。制度としての透明性が高く、「いくら得するか」が分かりやすい。

この違いが「誰にとってどちらが有利か」の分かれ目になる。iDeCoのメリットは今の所得税率に比例し、NISAのメリットは将来の運用益に比例する。

会社員の場合——年収別の節税インパクト

企業年金のない会社員のiDeCo拠出上限は月23,000円(2026年12月まで。2027年1月からは月62,000円に引き上げ予定)。この月23,000円を拠出した場合の年間節税額を見てみる。

年収(目安)所得税率iDeCo年間拠出額所得税の節税住民税の節税(10%)合計節税額
300万円5%276,000円13,800円27,600円41,400円
400万円5%276,000円13,800円27,600円41,400円
600万円10%276,000円27,600円27,600円55,200円
800万円20%276,000円55,200円27,600円82,800円

年収800万円の会社員がiDeCoに月23,000円を拠出すると、所得税と住民税を合わせて年間約83,000円の節税になる。同じ金額をNISAに入れた場合、拠出時の節税効果はゼロだ。

ここだけ見ると「iDeCoの圧勝」に見えるが、話はそう単純ではない。

iDeCoの出口問題——退職金と衝突するケース

iDeCoの受取時には退職所得控除が使える。勤続年数(またはiDeCo加入年数)に応じた控除枠があり、この枠内なら実質非課税で受け取れる。

退職所得控除の計算式はこうだ。

勤続年数控除額
20年以下40万円 × 勤続年数
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)

30年勤続なら1,500万円の控除枠がある。だが会社の退職金が2,000万円ある場合、枠を超えた500万円が課税対象になる。そこにiDeCoの受取が加わると、さらに課税が増える。

これが「iDeCoの出口問題」だ。iDeCoと会社の退職金を同じ年に受け取ると、退職所得控除の枠を食い合う。

対策としては以下がある。

  • iDeCoを60歳で一括受取し、会社の退職金を65歳で受け取る(5年以上ずらす)
  • iDeCoを年金形式(分割)で受け取る(ただし雑所得として課税される)
  • 会社の退職金が少ない場合はそもそも問題にならない

退職金が少ない、またはない職場で働いている人にとってはiDeCoの出口問題は軽い。逆に、大企業で退職金が2,000万円以上見込める人は、出口戦略まで考えた上でiDeCoの拠出額を決める必要がある。

ただし、この出口問題があるからといってiDeCoを避けるのは早計だ。拠出時の節税効果は確定リターンであり、運用益も非課税で積み上がる。出口で多少課税されても、トータルで見ればプラスになるケースがほとんどだ。

フリーランスの場合——iDeCoの節税力が段違い

フリーランス(第1号被保険者)のiDeCo上限は月68,000円(国民年金基金・付加保険料との合算)。2027年1月以降は月75,000円に引き上げ予定だ。会社員の約3倍の上限がある。

年収別にフル拠出した場合の節税額を計算してみる。

年収(事業所得)所得税率年間拠出額所得税の節税住民税の節税合計節税額
300万円10%816,000円81,600円81,600円163,200円
500万円20%816,000円163,200円81,600円244,800円
800万円23%816,000円187,680円81,600円269,280円

年収500万円のフリーランスがフル拠出で年間約25万円の節税。これはNISAの運用益非課税では到底追いつけない規模だ。NISAで年間25万円分の税金を節約するには、運用益が約123万円(25万÷20.315%)必要になる。元本に対して相当なリターンを出さなければならない計算だ。

フリーランスの場合、退職金制度がないことが多いのでiDeCoの出口問題も比較的軽い。退職所得控除の枠をiDeCo受取にまるごと使える。

ただし、月68,000円のフル拠出は手元の資金繰りに直結する。フリーランスは収入が不安定なことが多いので、生活防衛資金(最低6ヶ月分の生活費)を確保した上で、無理のない金額から始めるのが現実的だ。

加えて小規模企業共済(月70,000円上限)も全額所得控除になる。iDeCoと小規模企業共済を合わせると月138,000円、年間165万円以上の所得控除が可能だ。ただし、これだけ拠出すると年収500万円のフリーランスなら手取りの3割以上が拠出に消える。理論上は最適でも、生活が成り立たなければ意味がない。

投資予算別の最適配分モデル

理論は分かった。では実際にどう配分すればいいか。3つのパターンで具体的に示す。

月3万円の場合

対象iDeCoNISA理由
会社員・年収600万以上23,000円7,000円iDeCoの節税効果が高い。上限まで埋めて残りをNISA
会社員・年収400万以下10,000円20,000円所得税率5%ではiDeCoの節税メリットが薄い。流動性のあるNISA優先
フリーランス・年収500万以上30,000円0円所得税率20%でのiDeCo節税効果が圧倒的

年収600万以上の会社員なら、iDeCo上限まで入れて残りをNISAに回すのが合理的だ。年間の節税額55,200円は確定リターンであり、投資信託の運用リスクとは無関係に得られる。

年収400万以下の場合はiDeCoの節税メリットが年間約41,400円にとどまる。月10,000円のiDeCoでも約15,000円の節税は得られるし、残りの20,000円をNISAに回せば流動性も確保できる。

月5万円の場合

対象iDeCoNISA理由
会社員・年収600万以上23,000円27,000円iDeCo上限を埋めた上でNISAも十分確保
会社員・年収400万以下15,000円35,000円NISAを厚めにして流動性を確保
フリーランス・年収500万以上50,000円0円iDeCoの節税効果を最大化。NISAは余裕が出てから

月5万円あれば会社員はiDeCoの上限23,000円を埋めた上でNISAにも回せる。バランスの良い配分になる。フリーランスは節税効果が大きいiDeCoを優先し、余裕が出てからNISAに手を広げるのが定石だ。

月10万円の場合

対象iDeCoNISA理由
会社員23,000円77,000円iDeCo上限後はNISAに全振り。年間92万でもNISA枠は余裕
フリーランス68,000円32,000円iDeCoフル拠出の節税が年25万円。残りをNISA

月10万円の予算があるなら、会社員はiDeCo上限を埋めた上でNISAの枠を積極的に使う。NISAの年間上限360万円(つみたて120万+成長240万)に対して月77,000円は年間約92万円なので、まだかなりの余裕がある。

フリーランスはiDeCoフル拠出で年間約25万円の節税を確保し、残りの32,000円をNISAのつみたて投資枠に回す。小規模企業共済も併用するなら、さらにiDeCoの上にもう一段の所得控除が乗るが、月10万円の投資予算にさらに小規模企業共済を加えると資金繰りがかなりタイトになる。

iDeCoを優先すべき人の3条件

3つの条件が揃うなら、iDeCoを先に埋める方が有利だ。

所得税率が20%以上(年収目安で約700万円以上)。月23,000円の拠出で年間83,000円の節税は確定リターン。投資信託で同等のリターンを得るのは簡単ではない。

60歳まで引き出す必要がない。住宅購入や教育費の準備が別途できている、または住宅ローンの頭金をすでに用意している。iDeCoは60歳まで一切引き出せないので、ライフイベントの資金需要を別の口座でカバーできることが前提だ。

退職金が少ない、またはない。退職所得控除の枠をiDeCo受取にフルで使える。大企業の退職金が2,000万円以上見込める場合は、出口で課税される分をシミュレーションしてから判断する必要がある。

NISAを優先すべき人の3条件

逆に、以下に当てはまるならNISAから始めた方がいい。

所得税率が5〜10%(年収400万円以下)。iDeCoの節税メリットが年間数万円にとどまる。NISAの運用益非課税の方が長期的に大きなメリットになる可能性が高い。

数年以内にまとまった出費がありえる。転職・結婚・住宅購入を控えている場合、iDeCoに入れたお金は60歳まで引き出せない。NISAならいつでも売却して現金化できる。この「流動性」は数字に表れにくいが、精神的な安心感は大きい。

退職金が手厚い。大企業・公務員で退職金が1,500万円以上見込める場合、iDeCoの受取時に退職所得控除の枠を使い切ってしまう可能性がある。この場合、拠出時に節税しても出口で課税されるため、トータルのメリットが小さくなる。

年齢別の考え方——20代・30代・40代で判断は変わる

年収と職業に加えて、年齢もiDeCoとNISAの優先順位に影響する。

20代。iDeCoに入れると60歳まで30年以上引き出せない。結婚・住宅購入・転職など、大きなライフイベントが控えている可能性が高い年代だ。NISAを中心にしつつ、iDeCoは月5,000〜10,000円程度で始めるのが手堅い。iDeCoの最大のメリットは「期間の長さ × 複利」なので、少額でも早く始めることには意味がある。ただし生活防衛資金が十分でないなら、NISAに全振りして流動性を確保する方が賢明だ。

30代。キャリアが安定し始め、年収も上がってくる時期。iDeCoの節税メリットが実感しやすくなる。住宅購入を控えているなら、頭金を確保した上でiDeCoとNISAの併用を検討する。30代でiDeCoを始めれば60歳まで25年以上の運用期間がある。年間276,000円を25年間、年利5%で運用すると約1,330万円(元本690万円+運用益約640万円)。運用益に課税されない点を加味すると、NISAとの併用の効果は大きい。

40代。iDeCoの拠出可能期間が20年を切ってくる。この年代でiDeCoを始めるなら、節税効果を主目的にした方が良い。運用期間が短いと複利効果が限られるので、「運用で増やす」よりも「拠出時に税金を減らす」メリットを重視する。年収が高い40代(所得税率20%以上)なら、iDeCoの節税効果だけで年間8万円以上になるので、投資としてではなく節税手段としてiDeCoを使う判断は合理的だ。

50代以降は出口戦略との兼ね合いが複雑になるので、ここでは割愛する。iDeCoの受取方法(一括 or 年金形式)と退職金のタイミングを総合的に検討する必要があり、個別の事情が大きく影響する。このあたりはFP(ファイナンシャルプランナー)への相談を検討する価値がある。

NISAの枠をどう使い分けるか

NISAにはつみたて投資枠(年120万円)と成長投資枠(年240万円)がある。iDeCoとの配分を決めた後、NISAに回す分をどちらの枠で使うか。

つみたて投資枠は長期の積立投資に適した投資信託のみが対象だ。金融庁が厳選した低コストのインデックスファンドが中心で、初心者が迷わずに始められる設計になっている。月1万円からコツコツ積み立てるなら、こちらが基本だ。

成長投資枠は個別株やアクティブファンドにも投資できる。より幅広い選択肢がある反面、選び方を間違えると損失リスクも高い。投資経験がある人が自分の判断で銘柄を選ぶ場合に向いている。

iDeCoと併用する場合、NISAに回せる金額は限られることが多い。月3〜5万円をNISAに回すなら、つみたて投資枠だけで十分収まる。成長投資枠まで使い切るには年間240万円が必要で、iDeCoとの併用でここまで投資に回せる人は限られるだろう。

実用的な運用としては、iDeCoとNISAのつみたて投資枠で同じようなインデックスファンド(全世界株式や米国株式のインデックス)を積み立てるのが手間が少ない。iDeCoの方が手数料(口座管理料として月171〜600円程度)がかかるが、節税効果が手数料を大幅に上回るので問題にならない。

よくある疑問

Q. iDeCoとNISAで同じ投資信託を買ってもいいのか

問題ない。むしろ同じインデックスファンドを両方で買っている人は多い。制度が異なるだけで、投資先が同じでも非効率にはならない。iDeCoで全世界株式インデックス、NISAでも全世界株式インデックス——これで何も問題ない。分散投資の観点からは「投資先」を分散するのであって、「制度」を分散する必要はない。

Q. iDeCoの手数料は気にすべきか

iDeCoには加入時の手数料(初回のみ2,829円)と、毎月の口座管理料がかかる。金融機関によって異なるが、ネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)は口座管理料が月171円と最安水準だ。年間で2,052円。節税額が年間4万円以上あるなら、手数料はほぼ無視できる。銀行系のiDeCoは月400〜600円の口座管理料がかかるところもあるので、金融機関の選択は重要だ。

Q. 途中で配分を変更できるか

iDeCoの掛金額は年1回変更できる(2024年12月以降は月1回まで変更可能に緩和された)。運用中の資産の配分変更(スイッチング)はいつでも可能だ。NISAも売却・再購入はいつでもできるが、売却した分の非課税枠は翌年まで復活しない点に注意が必要だ。

Q. 会社に企業型DCがある場合はどうなるか

企業型確定拠出年金(DC)がある会社員もiDeCoに加入できる。ただし、iDeCoと企業型DCの合計で月55,000円(2026年12月まで)の上限がある。企業型DCの事業主掛金が月35,000円なら、iDeCoは月20,000円が上限になる。2027年1月以降は上限が月62,000円に引き上げられるので、iDeCoに回せる枠が広がる。自社の企業型DCの掛金額を確認した上で、iDeCoの拠出額を決めるのがいい。

2027年のiDeCo改正を見据えて

2027年1月から会社員のiDeCo上限が月23,000円から62,000円に大幅引き上げされる予定だ。これが実現すれば、年間拠出額は276,000円から744,000円に増え、年収800万円の会社員なら節税額が年間82,800円から223,200円に跳ね上がる。

この改正は、会社員のiDeCoの魅力を劇的に変える。現状では「月23,000円の上限が低すぎてiDeCoだけでは物足りない」と感じる人も多いが、月62,000円なら年間74万円以上を所得控除できる。NISAとの優先順位の判断も変わってくるだろう。

ただし、上限が上がったからといって無理に満額拠出する必要はない。60歳まで引き出せないお金が年間74万円増えるということだ。30歳で始めれば30年間、合計2,200万円以上が60歳まで拘束される。自分の年収と退職金見込み、手元に残すべき生活防衛資金を考えた上で、拠出額を決めればいい。

NISAの年間上限360万円とiDeCoの新上限を合わせると、年間で約434万円の税制優遇枠が使える計算になる。ここまでの金額を毎年投資に回せる人は限られるが、枠が大きいこと自体は悪い話ではない。

まずは月1万円でもいいから始めて、年収が上がったタイミングで配分を見直す——それが最も現実的な戦略だ。完璧な配分を追求して何も始めないより、少額でもスタートを切った方が、複利効果と節税の恩恵は早く効き始める。

口座開設先の選び方

iDeCoとNISAを同じ金融機関で開設する必要はない。それぞれ別の証券会社でも問題なく運用できる。

iDeCoは口座管理料の差が直接コストに響く。ネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券)は月171円で横並びだが、銀行系は月400〜600円かかるところもある。年間で2,500〜5,000円の差が出るため、ネット証券を選んでおくのが無難だ。

NISAは口座管理料が無料なので、取り扱い商品のラインナップとポイント還元で選ぶ人が多い。楽天証券なら楽天ポイント、SBI証券ならVポイントやPontaポイントで投信積立のポイント還元がある。月5万円の積立で年間3,000〜6,000ポイント程度。金額としては大きくないが、長期で積み上がると無視できない差になる。

すでにどちらかの口座を持っているなら、まずそこで始めるのが最速だ。口座開設に2〜3週間かかるiDeCoは特に、「検討中」の期間が長くなるほど機会損失が大きい。

なお、iDeCoの口座は1人1口座しか開設できない。金融機関を変更する場合は「移換」の手続きが必要で、完了まで1〜2ヶ月かかり、その間は運用が停止する。最初の選択が重要なので、手数料と商品ラインナップを比較した上で決めた方がいい。NISAの方は複数の金融機関に口座を持てないが、年単位で金融機関を変更できる。変更手続きは毎年10月〜翌年9月に受け付けている。