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企業型DCマッチング拠出 vs iDeCo 2026年比較

April 24, 2026
2 min read

「マッチングは会社掛金まで」の制限がなくなった

2026年 4月 1日、企業型 DC(確定拠出年金)のマッチング拠出に関するルールが大きく変わった。これまで「加入者の掛金は事業主掛金の額を超えてはならない」という制限があったが、これが撤廃された。

何が変わったのか、具体的な数字で見てみる。会社の掛金が月 3,000円のケースを考えよう。

改正前改正後(2026年 4月〜)
会社掛金3,000円/月3,000円/月
マッチング拠出の上限3,000円/月(会社掛金まで)52,000円/月(拠出限度額 55,000円 − 会社掛金 3,000円)
合計拠出額6,000円/月55,000円/月
年間の所得控除36,000円624,000円

改正前は、会社掛金が少額だとマッチング拠出もほぼ意味がなかった。月 3,000円の上乗せでは節税効果も微々たるもの。それなら iDeCoに加入して月 20,000円を拠出した方がましだ——そう判断して iDeCoを選んでいた人は多いだろう。

だが、制限が撤廃された今、状況は逆転する可能性がある。マッチング拠出で月 52,000円を拠出できるなら、iDeCoより有利になるケースが出てくるからだ。

マッチング拠出と iDeCo、何が違うのか

両方とも「自分のお金を拠出して、運用益非課税で老後資金を作る」という点は同じだ。だが、手数料、運用商品、拠出上限の 3つの軸で差がある。

比較項目マッチング拠出iDeCo
口座管理手数料0円(会社負担)月 171円〜 600円程度(金融機関による)
加入時手数料0円2,829円(初回のみ)
給付時手数料会社負担の場合あり自己負担(振込 1回 440円)
運用商品数会社が選定した 10〜 30本程度金融機関ごとに 30〜 80本程度
低コストインデックスファンド会社の選定次第SBI証券・楽天証券なら eMAXIS Slim 等あり
拠出上限(他の企業年金なし)月 55,000円 − 会社掛金月 20,000円(2026年 12月以降は月 62,000円 − 会社掛金)
手続き会社の人事・総務に申請自分で金融機関に申し込み
転職時転職先の DC or iDeCoに移換転職先に関係なく継続

手数料はマッチング拠出が圧勝

最も大きな差は口座管理手数料だ。iDeCoは最安の SBI証券やマネックス証券でも月 171円(国民年金基金連合会 105円 + 信託銀行 66円)がかかる。年間 2,052円。20年間で約 41,000円。運用額が大きくなればなるほど気にならない金額ではあるが、マッチング拠出なら最初からゼロだ。

さらに、給付時の手数料も会社が負担してくれるケースがある。iDeCoの場合は自分で負担する必要があり、一時金受取なら 440円、年金受取なら受取のたびに 440円がかかる。年 6回受取で年間 2,640円。些末な金額に見えるが、「コストがゼロ」と「コストが発生する」の差は心理的にも大きい。

運用商品は iDeCoが有利——ただし会社による

手数料ではマッチング拠出が圧勝するが、運用商品のラインナップでは iDeCoに軍配が上がることが多い。

企業型 DCの商品ラインナップは会社が運営管理機関と契約して決める。大企業であれば低コストのインデックスファンドが揃っていることもあるが、中小企業だと信託報酬 0.5%〜 1.0%のアクティブファンドしか選べないケースも珍しくない。

一方、iDeCoで SBI証券や楽天証券を選べば、信託報酬 0.05%台の eMAXIS Slim シリーズや楽天・オールカントリーなど、業界最安クラスの商品に投資できる。信託報酬の差は長期になるほど効いてくる。年間 0.5%の差が 30年複利で積み重なると、最終的な資産額に 10%以上の差が出ることもある。

自分の会社の企業型 DCにどんな商品があるか確認したことがない人は、まずそこから始めるべきだ。 人事部や総務部に聞けば、運用商品一覧を見せてもらえる。低コストのインデックスファンド(全世界株式 or 先進国株式で信託報酬 0.2%以下)があれば、マッチング拠出で問題ない。なければ、iDeCoで自分好みの商品を選ぶ方が合理的だ。

会社掛金の金額別に判断する

改正の恩恵を最も受けるのは、会社掛金が少額の人だ。会社掛金が月 5,000円の場合と月 30,000円の場合で、選択肢がどう変わるか整理する。

会社掛金が月 5,000円以下の場合

改正前はマッチング拠出の上限が月 5,000円で、iDeCoの月 20,000円に大きく負けていた。改正後は月 50,000円(= 55,000円 − 5,000円)まで拠出できるようになり、状況が一変した。

  • 運用商品が良好(信託報酬 0.2%以下のインデックスあり)→ マッチング拠出一択。手数料ゼロで月 50,000円まで拠出できる
  • 運用商品が微妙(信託報酬 0.5%以上しかない)→ iDeCoを選ぶ方が長期的に有利。手数料は月 171円かかるが、信託報酬の差の方が遥かに大きい

会社掛金が月 20,000円〜 30,000円の場合

マッチング拠出の枠は月 25,000円〜 35,000円(= 55,000円 − 会社掛金)。十分な拠出枠があるので、改正前から改正後の変化は小さい。

この場合は単純に、運用商品と手数料の比較で決めればいい。会社の DCに満足できる商品があるならマッチング拠出、なければ iDeCo。

会社掛金が月 40,000円以上の場合

そもそもマッチング拠出の枠は月 15,000円以下(= 55,000円 − 40,000円以上)。iDeCoの月 20,000円と大差ない。会社の DCの商品が良ければマッチング、そうでなければ iDeCo。

2026年 12月にもう一度変わる

4月の改正だけではない。2026年 12月にはさらに大きな変更が控えている。企業型 DCの拠出限度額が月 55,000円から月 62,000円に引き上げられるのだ。iDeCoも同様に、企業年金のない会社員の拠出限度額が月 23,000円から月 62,000円に引き上げられる。

この改正で何が変わるか。企業型 DC加入者の iDeCoの拠出上限は「月 62,000円 − 企業型 DCの会社掛金」で計算される。会社掛金が月 5,000円なら、iDeCoで月 57,000円まで拠出できる計算だ。

つまり、12月以降はマッチング拠出でも iDeCoでも拠出できる上限額はほぼ同じになる。差がつくのは手数料と運用商品だけだ。4月の改正で「マッチング拠出が圧倒的に有利」となったケースでも、12月以降は iDeCoの拠出枠拡大で差が縮まる。

だからといって「12月まで待つ」のは得策ではない。4月〜 11月の 8ヶ月分の拠出機会を逃すことになるし、その間の所得控除も受けられない。今できることは今やっておくべきだ。

それでも iDeCoを選ぶべき 3つのケース

手数料だけ見ればマッチング拠出が有利だが、以下のケースでは iDeCoを選ぶ方が合理的だ。

1. 会社の DCの運用商品がコスト高 — 信託報酬 0.5%以上の商品しかない場合、月 171円の口座管理手数料を払ってでも iDeCoで低コストインデックスファンドを選ぶ方が、20〜 30年の運用で圧倒的に得になる。信託報酬の差 0.3%は、30年間・月 5万円の積立で約 100万円以上の差を生む。

2. 近いうちに転職を考えている — マッチング拠出は退職すると企業型 DCごと移換手続きが必要になる。転職先に企業型 DCがなければ iDeCoに移換するしかない。最初から iDeCoで運用していれば、転職しても口座はそのまま継続できる。転職を 1〜 2年以内に考えているなら、iDeCoで始めた方が手間が少ない。

3. 受給開始年齢の柔軟性を重視する — iDeCoは 60歳〜 75歳の間で受給開始時期を自分で選べる。企業型 DCも同様だが、退職時に一括で受け取るよう促される会社もある。受取時期を自分でコントロールしたい人は iDeCoが向いている。

節税効果を具体的に計算する

マッチング拠出の節税効果は「拠出額 × 税率」で概算できる。年収 500万円の会社員(課税所得 約 250万円、所得税率 10%・住民税率 10%)が月 50,000円をマッチング拠出した場合を見てみる。

  • 年間拠出額:50,000円 × 12ヶ月 = 600,000円
  • 所得税の節税:600,000円 × 10% = 60,000円/年
  • 住民税の節税:600,000円 × 10% = 60,000円/年
  • 合計節税額:120,000円/年

年間 12万円の節税は大きい。10年続ければ 120万円。これに加えて運用益が非課税になるため、NISA と並んで使い勝手のいい節税制度だ。

同じ条件で iDeCoを選んだ場合、現行の上限は月 20,000円(年間 240,000円)なので、節税額は 48,000円/年にとどまる。マッチング拠出なら 120,000円。差額は年間 72,000円だ。もちろん 2026年 12月以降は iDeCoの上限も上がるので、この差は縮まる。

ただし、節税効果が大きいということは、それだけ 60歳まで資金が拘束されるということでもある。月 5万円を 30年間拠出すれば元本だけで 1,800万円。生活費を圧迫してまで満額拠出する必要はない。iDeCo や NISA と合わせたトータルの資産配分を考えた上で、無理のない金額を設定するのが正解だ。

切り替えの手続きは意外とシンプル

iDeCoからマッチング拠出に切り替える場合(またはその逆)の手続きは、思ったほど複雑ではない。

iDeCo → マッチング拠出に変更する場合

  1. 会社の人事・総務に「マッチング拠出を開始したい」と申し出る
  2. 会社から加入者掛金の変更届を受け取り、希望額を記入して提出
  3. iDeCoの加入者資格喪失届を iDeCoの金融機関に提出
  4. iDeCoの資産は企業型 DCに移換される(手続きに 1〜 2ヶ月かかることがある)

注意点は、マッチング拠出と iDeCoは併用できないという点だ。マッチング拠出を選んだ場合、iDeCoには加入できない(2026年 4月時点)。どちらか一方を選ぶ必要がある。

変更のタイミング — 掛金の変更は年 1回しかできない会社が多い。4月改正を受けて「マッチングに切り替えたい」と思っても、次の変更タイミングが来年の 4月という場合もある。まずは会社の規約で変更可能な時期を確認しておくこと。急いでいるなら人事部に「規約上、いつから変更可能か」を直接聞くのが一番早い。

よくある判断ミスと注意点

「とりあえず満額拠出」は危険 — マッチング拠出で月 5万円を拠出すれば年間 12万円の節税になるが、60歳まで引き出せないことを忘れてはいけない。生活防衛資金(生活費 6ヶ月分)が確保できていない段階で満額拠出すると、急な出費に対応できなくなる。まずは月 1〜 2万円から始めて、家計に無理がないか 3ヶ月ほど様子を見るのが現実的だ。

NISA との優先順位 — 節税効果だけ見れば確定拠出年金(マッチング or iDeCo)の方が大きい。拠出時に所得控除を受けられる分、NISA にはない節税メリットがある。ただし流動性では NISA が圧倒的に上だ。いつでも売却して現金化できる NISA に対し、確定拠出年金は原則 60歳まで引き出せない。30代前半で住宅購入やライフイベントを控えている人は、NISA を優先して確定拠出年金は余剰資金の範囲にとどめる方が合理的なケースもある。

退職金との受取時期の調整 — マッチング拠出も iDeCoも、一時金として受け取る場合は退職所得控除の対象になる。だが、会社の退職金と同じ年に受け取ると、退職所得控除の枠を食い合って税負担が増えるケースがある。退職金が出る会社なら、受取時期をずらすことで税負担を抑えられる可能性がある。この点は将来的な話だが、頭の片隅に入れておいて損はない。

まず自分の会社の DCを確認することから

マッチング拠出と iDeCoの損得を比較する前に、まず確認すべきことがある。

  • 自分の会社に企業型 DCがあるか
  • マッチング拠出制度が導入されているか(企業型 DC があってもマッチング拠出を導入していない会社もある)
  • 会社掛金はいくらか
  • 運用商品のラインナップ(特にインデックスファンドの信託報酬)

この 4点がわからないと判断しようがない。人事部や総務部に聞けば教えてもらえる。企業型 DCの運用サイト(JIS&T や NRKなど)にログインすれば、運用商品一覧と信託報酬もすべて確認できる。

改正で選択肢が広がった今こそ、自分の会社の制度をきちんと把握しておくべきタイミングだ。確認だけなら 10分もかからない。