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10年前のエアコン、買い替えで電気代はいくら減る

June 6, 2026
1 min read

梅雨が明ければ、すぐ猛暑がくる。リビングのエアコンが10年選手で、去年あたりから「冷えが弱い」と感じているなら、この夏が判断の分かれ目だ。今買い替えるべきか、もう1年だましだまし使うか。

結論から言うと、答えは部屋の広さと使い方で割れる。電気代の差だけで本体代を取り戻せる人もいれば、何年使っても回収できない人もいる。さらに2026年夏は、補助金・賦課金・2027年の制度変更という三つの事情が重なっていて、これを知らずに買うと数千円〜数万円を取りこぼす。順番に整理していく。

まず2026年夏の電気代の地合いを正確につかむ

「補助が出るから安くなる」と単純に喜ぶ前に、相殺される分を見ておきたい。

2026年度の再エネ賦課金は1kWhあたり4.18円。前年度の3.98円から上がり、初めて4円を超えた過去最高額だ。5月検針分から適用され、明細では6月請求から効いてくる。月300kWh使う家庭で、賦課金だけで年720円ほどの上乗せになる。

一方で政府は5月26日、7〜9月の電気・ガス料金支援を閣議決定した。予備費から5,135億円を充て、電気代(低圧)の値引きは7月3.5円/8月4.5円/9月3.5円(1kWhあたり)。標準的な家庭で3か月合計5,000円程度の負担減になる計算だ。

つまり夏のあいだは補助で一時的に安くなるが、賦課金の上昇は通年で効き続ける。補助は10月以降の延長が確定していない。「安くなった夏」を基準に家計を組むと、秋にしっぺ返しがくる構造だと頭に入れておくといい。

数字で実感してみる。月400kWh使う家庭なら、8月は補助4.5円で約1,800円引かれるが、同じ月に賦課金4.18円が約1,672円乗る。差し引きすると、補助のありがたみは賦課金にほぼ食われている。補助は「下がった」のではなく「上がり方を抑えた」程度、と捉えるのが実態に近い。だからこそ、夏の冷房費そのものを構造的に下げる手段——古い機械の買い替えや使い方の見直し——を、補助とは別の軸で考える価値がある。

買い替えの損益分岐:畳数で結論が逆転する

ここが本題だ。10年落ちと最新機の年間電気代の差を、本体+標準工事の価格で割ると、何年で元が取れるかが見える。

部屋10年落ちとの年間差額本体+工事の目安電気代だけの回収年数
6畳(2.2kW)約3,000円約10万円30年超(回収困難)
14畳(4.0kW)約12,600円約18万円約14年
18畳(5.6kW)約13,500円約23万円約17年

資源エネルギー庁の試算では、2027年の新基準で6畳用は年約2,760円、14畳用は年約12,600円の削減が見込まれる。18畳クラスでは2011年モデルと2024年モデルの比較で、年間電気代の目安が6万3,240円から4万9,755円へ、1万3千円ほど下がる実例も報告されている。

自分の家で計算するなら手順はこうだ。今のエアコンの期間消費電力量が分からなければ、当時の年式の同畳数モデルの値で代用する。たとえばリビングの14畳機で、古い機種が年1,200kWh、最新機が年800kWhなら差は400kWh。電気単価を31円とすると、400×31で年約1万2,400円の節約になる。本体+工事が18万円なら、18万÷1.24万で回収はおよそ14〜15年。冷蔵庫と違い、エアコンの寿命はおおむね10〜15年なので、「電気代だけでは寿命までに回収しきれないかもしれない」とわかる。この一手間で、買い替えを電気代の物語ではなく故障リスクの物語として正しく捉え直せる。

表を見れば分かるとおり、電気代の差だけで本体代を取り戻すのは現実には難しい。とくに小さい部屋ほど割に合わない。では買い替えに意味がないかというと、そうではない。10年を超えると故障リスクと冷媒漏れによる効率低下が一気に増え、真夏に壊れれば工事は数週間待ち、その間の熱中症リスクも背負う。「壊れる前に、繁忙期を外して、補助を使って替える」ことの価値は電気代の数字には出てこない。

判断の目安はシンプルだ。冷えが明らかに落ちている・10年を超えた・大きい部屋でフル稼働する——この三つが重なるなら今夏が買い時。小さい寝室で年に数えるほどしか使わないなら、壊れるまで引っ張ってもいい。

なお畳数は「広め」を選ぶと結果的に得することが多い。能力に余裕があるほどフルパワーで回す時間が短く済み、消費電力が抑えられるからだ。6畳の部屋に6畳用ギリギリを入れるより、8畳用を入れたほうが夏のピーク時にラクをする。本体価格は少し上がるが、効率と寿命の面で元を取りやすい。

2027年4月の新省エネ基準で「待つ」のは得か

もう一つの時限要素が、2027年4月施行の新しい省エネ基準だ。トップランナー制度の見直しで、エアコンに求められるAPF(通年エネルギー消費効率)が大幅に引き上げられる。14畳クラスでは最大34.7%もの効率改善が課される。

問題は価格への跳ね返りだ。現行の普及価格帯(5万〜10万円のスタンダードモデル)の多くは新基準を満たせず、製造・販売ができなくなる。6〜8畳用の本体は、今の8万〜12万円から、2027年以降は12万〜18万円程度に上がると見込まれている。

ここで判断が割れる。省エネ性能だけを取れば2027年モデルが上だが、本体価格の上昇分を電気代で取り戻すには小畳数なら何年もかかる。むしろ2026年内の在庫処分セールで、基準切替前の現行モデルを安く掴むほうが、トータルの支出は小さくなる家庭が多い。最高効率にこだわるより、「今ある手頃なモデルを夏前のセールで買う」のが現実解になりやすい、というわけだ。

ただし注意点もある。基準切替が近づくと、メーカーは新基準対応モデルへ生産をシフトし、現行の安いモデルは品薄になりやすい。「2026年の終わりまで待てば底値」と粘っていると、欲しい畳数の在庫が消えていることもある。狙うなら夏前〜お盆前のセール、遅くとも年内の決算期セールあたりが現実的なラインだ。

買い替えずに今夏を乗り切るなら:効く順に並べる

「今年は替えない」と決めた人、あるいは結論を秋まで持ち越す人向けに、即効性のある節約策を効果の大きい順に並べておく。

  • 設定温度を1度上げる:冷房は設定温度を1度上げると、消費電力がおおむね10%前後下がるとされる。28度を狙うより、無理のない範囲で1〜2度上げるほうが続く。
  • フィルター掃除を2週間に1回:目詰まりしたフィルターは冷房効率を1〜2割落とす。掃除機でホコリを吸うだけで体感が変わる。電気代ゼロでできる最優先策だ。
  • サーキュレーターの併用:冷気は下にたまる。扇風機やサーキュレーターで部屋全体に回せば、設定温度を上げても涼しく感じる。本体数千円の投資で効果が大きい。
  • こまめに消すより連続運転:30分〜1時間程度の外出なら、消すより付けっぱなしのほうが立ち上げの電力を食わず安いことが多い。起動時がいちばん電気を使う。
  • 室外機の周りを片付ける:室外機の前に物を置いて熱がこもると効率が落ちる。日よけを付けて直射日光を避けるのも地味に効く。

順番が大事だ。フィルター掃除と設定温度は今日タダでできる。買い替えや電力会社の乗り換えは、効果は大きいが手間とお金がかかるので、まず無料の手を打ってから検討すればいい。電力会社の乗り換えは、料金プランそのものを下げる打ち手として有効だが、エアコンの効率改善とは別軸——「使う量を減らす」のがエアコン側、「単価を下げる」のが契約側、と分けて考えると優先順位を間違えない。

自治体の購入補助は使えるなら使う

国の補助は料金値引きだが、エアコン本体の購入補助は自治体が出している。中心は住民税非課税世帯や高齢者のみの世帯で、熱中症対策として数万円を上限に設置費を補助する自治体がある(松本市などが実例)。

要件は自治体ごとにバラバラなので、「(自分の市区町村名) エアコン 購入 補助金 2026」で検索し、福祉課や環境課のページを当たるのが早い。条件に当てはまる世帯なら、本体代の回収年数を一気に縮められる。事業者向けには厚生労働省のエイジフレンドリー補助金(職場の熱中症対策)もあるが、これは家庭用とは別枠だ。

申請で取りこぼしやすいのが「買う前に申請」という順番のルールだ。多くの補助は購入後の領収書では受け付けず、事前申請・交付決定を経てから購入する流れになっている。先に買ってしまうと対象外になることがあるので、補助を狙うなら店に行く前に役所の窓口で手順を確認しておく。予算枠が埋まり次第終了する先着方式の制度も多く、夏本番に申請が殺到する前、梅雨どきに動くほうが通りやすい。

省エネラベルはここだけ見る

店頭で迷ったら、見るべき数字は二つでいい。一つはAPF(通年エネルギー消費効率)で、数字が大きいほど省エネ。もう一つは期間消費電力量(kWh/年)で、これに電気料金の単価(目安31円/kWh前後)を掛けると、その機種のざっくりした年間電気代が出る。同じ畳数で2機種を比べるとき、本体価格の差を期間消費電力量の差額で割れば、自分で回収年数を計算できる。多機能モデルとスタンダードモデルで迷ったら、この計算をやると過剰なグレードに払いすぎずに済む。

賃貸で備え付けのエアコンが古い場合

最後に賃貸の人へ。部屋に最初から付いていた「設備」のエアコンが壊れたり著しく効かなくなった場合、修繕義務は原則として大家側にある。自費で買い替える前に、まず管理会社へ連絡して交換を相談したい。

逆に、自分で後から取り付けたエアコンは自分の所有物(残置物)扱いになり、退去時に撤去を求められることがある。設備か自前かで負担者が変わるので、契約書の設備一覧を一度確認しておくと、いざというとき揉めずに済む。

交渉のコツは、感情論ではなく「効かない事実」を具体的に伝えることだ。設定温度まで下がらない、運転音が異常、製造から十数年といった状態を写真や数字で示せば、大家も修繕に応じやすい。完全な故障でなくても、設備として果たすべき冷房機能が損なわれていれば交換を求める根拠になる。それでも応じてもらえず自費で替える場合は、退去時の扱い(撤去するか置いていくか)を入居中のうちに書面で確認しておくと、後のトラブルを防げる。


迷っているなら、まず自分の部屋のエアコンの製造年を室内機の側面シールで確認するところから始めるといい。10年を超えていて大きい部屋なら、夏前のセールと自治体補助を調べてから動く。それだけで判断の精度はだいぶ上がる。

※補助金の単価・期間や自治体制度は変更されることがある。最新の内容は資源エネルギー庁および各自治体の公式サイトで確認してほしい。