6月15日、忘れたころに茶封筒が届く
確定申告が終わって2ヶ月、ようやく税務まわりから解放されたと思ったら、6月中旬にまた税務署から茶封筒が届く。「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の通知書」だ。前年の申告納税額が15万円以上あったフリーランス・個人事業主・副業会社員のもとに、毎年6月15日までに普通郵便で発送される。
封を開けて初めて「7月末までに数十万払うのか」と気づくケースが本当に多い。住民税の特別徴収も6月から始まるし、国保料の通知も6月、固定資産税の第1期も6月——納税のラッシュ月に予定納税が乗っかってくる。
この記事では、2026年の予定納税スケジュールの基本、所得600万・1,000万・1,800万円の3ケースで実額がいくらになるか、7月15日締切の減額申請で第1期分を半額以下にする手順、払えないときの3つの救済策、納付方法別のポイント還元差まで、通知書到着前に押さえておきたい実務をまとめた。
予定納税の基本ルール:対象者・通知時期・納付スケジュール
予定納税は、前年分の申告納税額(=所得税の年税額から源泉徴収税額を差し引いた残り)が15万円以上だった人に対して、税務署が「来年もそれくらい払うだろう」と見込んで前払いさせる制度だ。
| 項目 | 2026年のスケジュール |
|---|---|
| 通知書発送 | 2026年6月15日まで(普通郵便) |
| 第1期分(基準額の3分の1) | 2026年7月1日〜7月31日 |
| 第2期分(基準額の3分の1) | 2026年11月1日〜11月30日 |
| 第3期分(残り3分の1) | 2027年3月15日(確定申告で精算) |
| 減額申請(第1期分) | 2026年7月15日まで(必着) |
| 減額申請(第2期分) | 2026年11月15日まで(必着) |
ポイントは、年税額をいきなり3月にまとめて納めるのではなく、3分の1ずつを前年の7月・11月に前払いし、残り3分の1を翌年3月の確定申告で精算する分割払いだという点。会社員の源泉徴収・特別徴収の代わりだと考えればわかりやすい。
2024年は本人3万円・扶養親族1人3万円の定額減税を予定納税額から控除する特例運用があったので、通知書のフォーマットがイレギュラーだった。2025年分(=2026年6月通知)からは通常運用に戻る。さらに2025年分から所得税の基礎控除が48万円→58万円に引き上げられているため、前年と所得が変わらなくても予定納税額は数万円下がる。「想定より少ない」と感じても、たぶんそれは正しい数字だ。
通知書には3つの様式が同封される。①予定納税額の通知書本体(第1期・第2期の金額と納期限)、②納付書(第1期分・第2期分の2枚)、③振替納税利用者向けの引落予定通知。振替納税未設定の人は納付書を持って7月中にコンビニ・銀行・郵便局・税務署窓口で納付する流れになる。コンビニ納付は1枚あたり30万円以下が上限なので、第1期36万円のような中規模は銀行窓口かクレジットカード納付に回ることになる。
所得別シミュレーション:600万・1,000万・1,800万円
具体的な数字で見たほうが早い。事業所得から青色申告特別控除65万円・基礎控除58万円・社会保険料控除を差し引いて課税所得を出し、所得税(累進)+復興特別所得税(2.1%)で年税額を計算する。源泉徴収のない事業所得前提で、年税額=申告納税額として扱う。
| 事業所得 | 課税所得(目安) | 所得税+復興税 | 予定納税基準額 | 第1期=第2期(各) | 年合計の前払い |
|---|---|---|---|---|---|
| 600万円(独身・iDeCo月6.8万円) | 約300万円 | 約20.6万円 | 20.6万円 | 約6.9万円 | 約13.7万円 |
| 1,000万円(配偶者控除あり子1人) | 約750万円 | 約110万円 | 110万円 | 約36.7万円 | 約73.4万円 |
| 1,800万円(高所得・法人成り検討) | 約1,550万円 | 約410万円 | 410万円 | 約136.7万円 | 約273万円 |
ここで効いてくるのが、住民税・国保・消費税が並走する点だ。所得1,000万円のフリーランスなら、住民税年75万円(6月〜翌5月の特別徴収)+国保年70万円(6月通知・10期払)+消費税本則なら年30万円規模、これに予定納税73万円が乗る。年間の納税キャッシュアウトは250万円超、月平均20万円だ。「事業がうまくいっているのに口座残高が減り続ける」という典型的なフリーランスのキャッシュフロー罠は、ここから始まる。
所得1,800万円ラインは、所得税ブラケットが33%に乗って住民税10%・事業税5%と合わせると実効税率48%超。マイクロ法人化で給与所得控除と法人税率(年800万円以下15%)を取りに行く損益分岐点でもある。
副業会社員も「申告納税額15万円」で対象になる
予定納税はフリーランスだけの話ではない。会社員でも、本業の給与以外の副業所得・配当・不動産所得が大きく、確定申告で精算した結果申告納税額が15万円以上残った場合は、翌年の通知対象になる。
たとえば本業給与1,200万円+副業所得400万円(年間)の会社員で、本業は年末調整で完結、副業分の所得税が住民税の特別徴収だけで処理されず、確定申告で約30万円の追加納税になったケース。翌年6月の通知では、その30万円を基準額として第1期・第2期で各10万円の前払いが要求される。
副業会社員にとって厄介なのは、本業の給与から源泉徴収で所得税を天引きされている上に、さらに副業分の前払いが乗ってくる点だ。源泉徴収を「予定納税控除前ベース」で見るので、給与のサラリーマン向け源泉は予定納税基準額の計算から差し引かれない。住民税の普通徴収を選んでも予定納税は本人口座に直接来る——ここで初めて副業バレを心配し始める人もいるが、予定納税は税務署からの直接通知なので会社経由ではない。
副業会社員のもう1つのパターンは、不動産所得(賃貸マンション・駐車場)で15万円以上の納税が発生したケース。サラリーマン+不動産1棟オーナーで本業給与1,500万円+不動産所得200万円なら、確定申告で約20万円の追加納税→翌年6月に予定納税通知という流れ。不動産は売上(家賃収入)と経費(減価償却・修繕費・固定資産税)のブレが大きいので、減額申請の余地がフリーランス以上に大きい年もある。逆に売却益(譲渡所得)が出た年は分離課税扱いで予定納税基準額には算入されないので、翌年の通知額がいきなり下がることもある。
減額申請を出すべきタイミングと書き方
予定納税は前年実績ベースで通知される。今年の所得が前年より明らかに下がる見込みなら、減額申請書を出して通知額を圧縮できる。
減額申請が認められる条件は「その年の見込み納税額が予定納税基準額を下回ると見込まれる場合」。具体的には、廃業・休業・売上減・大型経費の発生・控除額の増加(扶養家族増・iDeCo増額・小規模企業共済増額など)が該当する。「なんとなく不安だから」では通らないが、エビデンスさえ揃えば却下される事例は多くない。
実額の効きはこんな感じだ。所得1,000万円→2026年は売上半減で所得500万円見込みのケースで試算する。
- 通知書ベースの予定納税:第1期36.7万円+第2期36.7万円
- 減額申請後(見込み所得500万円ベース):第1期約12万円+第2期約12万円
- 圧縮効果:年合計▲48万円のキャッシュアウト削減
減額申請の手順は次の通りだ。
- 国税庁サイトから「予定納税額の減額申請書」と「所得控除等の見積額計算書」をダウンロード(検索窓に「減額申請書」)
- 6月30日(第1期分)または10月31日(第2期分)時点での見込み所得・控除を試算して記入
- 売上推移・受注減少のエビデンス(クライアント解約メール・売上台帳のスクショ等)を準備
- e-Taxで電子申請(添付資料の提出省略可)、または所轄税務署に郵送(7月15日必着)
- 1〜2週間で承認/却下の通知が届く
e-Taxなら自宅で完結する。提出後は通知書ではなく承認通知の金額で納付すればいい。
却下されることはあるか。実務上、見込み所得の根拠が薄い(具体的なエビデンスなしに「不安だから半額にしたい」)場合は、税務署から追加資料の提出を求められて事実上の取り下げに追い込まれることがある。一方で、クライアントの解約通知メール、案件単価の改定通知、廃業届のコピー、扶養家族の追加(出生届のコピー)、iDeCoの掛金額変更通知書など、数字の根拠になる紙が1枚でもあれば、ほぼ通る。
注意したいのが2点。第1期分の減額申請(7月15日締切)で承認された見込み所得は、第2期分にも自動的には引き継がれない。10月末時点で再度見直して、必要なら第2期分の減額申請を11月15日までにもう一度出す。第2に、減額申請で減らした分を払いきれずに翌年の確定申告で精算するケース——「本来の見込みより所得が増えてしまった」場合は、追徴ではなく通常の年税額との差額を3月に清算するだけで、加算税はかからない。減額申請は「予測」であって「過少申告」ではないからだ。
払えないときの3つの救済策
ここからが本題だ。減額申請が間に合わなかった、または申請が却下された、けれど払えない。このとき絶対に放置してはいけない。納期限の翌日から延滞税が走り、2ヶ月を超えると年率8.7%(2026年特例基準割合の見込み)に跳ね上がる。20万円の予定納税を半年放置するだけで延滞税8千円超が乗る計算だ。
代わりに次の3つを順に検討する。
1. 換価の猶予(国税通則法151条の2) — 一時に納付すると事業継続が困難になる場合、最長2年間の分割納付を申請できる。延滞税は年8.7%→年0.9%に大幅圧縮される。申請期限は納期限から6ヶ月以内、原則担保提供必要だが100万円以下なら不要。これが現実的に最も使いやすい。
2. 納税の猶予(同46条) — 災害・病気・廃業など特別な事情がある場合のみ。延滞税は全額免除または0.9%まで圧縮。事由証明書類が要る。
3. 申告期限延長(個別指定) — 災害発生時の限定運用。通常のキャッシュフロー悪化では使えない。
順序としては、まず減額申請(7月15日まで)→間に合わなければ換価の猶予(納期限から6ヶ月以内)、というルートを覚えておけばいい。窓口に行く前にe-Taxの「納税の猶予の申請」メニューから準備可能だ。
換価の猶予の実額効果も具体的に見ておく。第1期分36.7万円を一括で払えない所得1,000万円フリーランスが、12ヶ月の分割納付申請(月3.06万円)を通したケース。延滞税は年率8.7%なら最大約1.6万円つくところ、換価の猶予の年率0.9%なら約1,650円で済む。▲約1.4万円のペナルティ削減だ。担保は不要(100万円以下のため)、申請書1枚と財産収支状況書のみ。窓口で30分、e-Taxなら自宅で完結する。「払えないから黙って放置」が最も損な選択肢になる理由がこれだ。
振替納税を設定するなら今がラストチャンス
意外と知られていないが、振替納税の新規申込は納期限の約1ヶ月前までしか間に合わない。第1期7月31日納付を振替にしたいなら、6月30日までに「預貯金口座振替依頼書」を税務署または金融機関に提出する必要がある。郵送だと到着まで数日かかるので、5月中の準備が現実的だ。
申込手順は3ステップでシンプルだ。
- 国税庁サイトから「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」をダウンロード(または税務署窓口で受領)
- 個人事業の屋号・住所・口座番号・銀行届出印を記入(ゆうちょ銀行も対応)
- 所轄税務署または引落銀行に郵送/持参
e-Taxで開業届を出して既にダイレクト納付の利用者IDを持っている人は、e-Tax経由で「ダイレクト納付の利用申込」のオンライン版でも代替できる。こちらは2024年4月から始まったe-Tax完結ルートで、銀行届出印不要・ペーパーレスだが、ネットバンキング契約のある口座限定だ。
振替納税のメリットは引落日の約1ヶ月後ろ倒し効果に加えて、残高さえ用意すれば物理的な手続きが不要になる点。コンビニで納付書を持って並ぶ必要も、銀行窓口に行く必要もない。デメリットは前述の「残高不足で引落不可だった場合の自動再引落なし」。これは口座残高アラート(各銀行アプリの通知設定)で運用回避できる。
納付方法別のポイント還元と利便性
通知書には「振替納税の口座から自動引き落とし」または「同封の納付書で銀行・コンビニ・税務署窓口」とだけ書いてあるが、実は納付方法の選択肢は広く、ポイント還元の差が無視できない。
| 納付方法 | 手数料 | 還元 | 上限 | 引落タイミング |
|---|---|---|---|---|
| 振替納税 | 無料 | なし | なし | 納期限から約1ヶ月後 |
| e-Taxダイレクト納付 | 無料 | なし | なし | 即時または日付指定 |
| クレジットカード納付 | 1万円ごと83円〜 | カード還元1〜1.5% | なし | カード締日 |
| nanaco/PayPay請求書払い | 無料 | 0.5〜1.0% | 30万円以下 | チャージ時 |
| QRコード納付 | 無料 | コンビニ決済分のみ | 30万円以下 | コンビニ決済時 |
所得1,000万円ケースで年73万円を納付する場合、クレカ還元1.0%なら年7,300円、決済手数料は約6,000円——差し引き1,300円のお得程度だが、ゴールドカードのボーナス還元期間に当たれば数万円の差が出ることもある。
特に振替納税は引落日が納期限から約1ヶ月後になる(第1期なら8月末頃、第2期なら12月初旬)。資金繰りに余裕を持たせたいフリーランスにはこれが地味に効く。納期限ギリギリにコンビニで払うより、1ヶ月の運転資金を確保できるからだ。
クレカ納付の落とし穴を1つだけ補足しておく。「国税クレジットカードお支払サイト」は手数料が1万円ごとに83円(消費税込)かかる。50万円を払うと手数料約4,150円、100万円なら約8,300円。還元率1.0%カードで相殺するとほぼトントン、1.5%カードでようやくプラスに乗る計算だ。一方、PayPay請求書払い・楽天ペイ請求書払いは手数料0円で還元0.5〜1.0%が丸ごと残るが、30万円という上限がきつい。第1期36万円のような微妙な金額は、20万円をPayPayで・残り16万円を振替で、と分けるのが最適解になることもある。
2025年基礎控除引上げの影響を見落とさない
意外と知られていないのが、2025年分から本格適用された基礎控除48万円→58万円(プラス10万円)の効果だ。これは2024年定額減税のような時限措置ではなく、恒久措置として残る。
予定納税基準額への影響を所得600万円ケースで試算すると、課税所得が10万円減る→所得税(税率10%)+復興税で年▲約2.1万円、これが3分の1ずつ第1期・第2期に乗るので各▲7,000円。所得1,000万円ケース(税率23%)なら年▲約2.3万円、所得1,800万円ケース(税率33%)なら年▲約3.4万円。地味だが、減税は減税だ。住民税側の基礎控除も43万円→48万円に動いているので、6月の住民税通知書の年税額も例年より小幅に軽くなる。
「前年と所得が変わらないのに通知書の金額が想定より少なかった」と感じたら、まずこの基礎控除引上げを思い出す。逆に、自分で予定納税額を概算したいときは、前年の確定申告書の「申告納税額」を3で割るのが最速だが、2025年分以降は基礎控除10万円増を反映するためにそこから所得税ブラケット相当額を差し引いておくと精度が上がる。
所得1,000万円フリーランスの月次キャッシュアウト早見表
シミュレーション数字は単発で見てもイメージしにくい。所得1,000万円のフリーランス(配偶者控除あり子1人・国保加入・消費税本則課税)が2026年中に経験する税・社会保険の現金支出を月次で並べると、こうなる。
| 月 | 主な支出 | 金額(目安) |
|---|---|---|
| 2026年3月 | 確定申告分(第3期+消費税) | 約60万円 |
| 4月 | 国民年金(月額) | 約1.7万円 |
| 5月 | 自動車税 | 約3.5万円 |
| 6月 | 住民税(普通徴収・第1期)+国保(第1期) | 約25万円 |
| 7月 | 予定納税第1期(振替なら8月末) | 約36.7万円 |
| 8月 | 国保(第3期)+住民税(第2期) | 約13万円 |
| 10月 | 住民税(第3期)+国保(第5期) | 約13万円 |
| 11月 | 予定納税第2期(振替なら12月初) | 約36.7万円 |
| 12月 | ふるさと納税駆け込み | 約20万円 |
| 2027年1月 | 住民税(第4期)+国保(第8期) | 約13万円 |
合計約220万円が「給料の代わりの売上から自動的に消える」構造だ。月次で均すと約18万円の納税専用口座キープが必要になる。だから多くの会計ソフトは「預金口座を本業用と納税用で分ける」運用を推奨している。freeeなら自動仕分けで「税金支払用口座」へ毎月20万円を自動振替する設定が可能だし、MFクラウドも同様だ。
数字を並べると気づく。予定納税の第1期と第2期の73万円は、年間納税フローの3分の1を占める。つまりここをコントロールできれば、年間キャッシュフローの輪郭が一気に変わる。減額申請を出す価値はそこにある。
「払う前」に効く控除の積み増し:まだ間に合うもの・間に合わないもの
予定納税の金額は2025年分の確定申告で決まっているので、6月の通知書到着時点では基本的に動かせない。けれど、減額申請を出す場合の見込み所得計算には、2026年中の控除の積み増しを反映できる。
| 控除種別 | 年間上限 | 第1期減額申請(7/15)に間に合うか |
|---|---|---|
| iDeCo拠出額の増額 | フリーランスは月6.8万円・年81.6万円 | 拠出済み分は反映可、増額手続は2〜3ヶ月かかるので6月実行が限界 |
| 小規模企業共済 | 月7万円・年84万円 | 6月入会・全額月払で効果反映可 |
| 経営セーフティ共済(倒産防止共済) | 月20万円・年240万円 | 法人化前提、個人事業主は不可 |
| 国民年金の前納(2年前納) | 約40万円 | 4月前納済み分なら反映可 |
| 生命保険料控除 | 12万円(新契約合算) | 既加入分なら12月末締め前提で反映可 |
| ふるさと納税 | 所得により変動 | 寄付実行ベースなので12月末まで反映可、ただし減額申請は7月時点なので未反映 |
ふるさと納税は所得税側ではなく住民税側の控除が大半なので、予定納税の減額にはあまり効かない。一方でiDeCoの月額増額(2027年1月から拠出限度額が一律月6.2万円→7.5万円に引き上げ予定)を見越して、2026年6月時点で月額を増やしておくと、第1期減額申請の見込み計算で年9.6万円程度の所得控除を上乗せできる。所得税率33%ブラケットなら所得税側で年▲3.2万円、予定納税基準額ベースで▲1万円ちょっとの効果だ。
小規模企業共済は申込から第1回掛金引落まで約2ヶ月かかる。今(5月)申し込めば7月から月7万円の引落が始まり、年48万円(7月〜翌6月)の所得控除が積み上がる。これは減額申請の見込み計算で使える数字だ。
「申し込みはしたけど書類が間に合わなかった」を回避する裏技として、6月のうちにe-Taxの「事前準備セットアップ」だけ済ませておくと、いざ通知書を受け取ってから5日以内にダイレクト納付・減額申請のオンライン提出まで一気に進められる。マイナンバーカード+ICカードリーダー(またはスマホ読取)があれば、税務署に行かずに完結する。ここまでをGW明け5月のうちに準備しておけば、6月15日の通知書到着時に焦らなくて済む。
消費税の中間納付と混同しないために
フリーランスがしばしば「予定納税」と取り違えるのが、消費税の中間申告納付だ。両者は別の税目で、通知書の発送元(税務署)は同じだが、対象者・基準額・納期限が完全に異なる。
| 項目 | 所得税の予定納税 | 消費税の中間納付 |
|---|---|---|
| 対象者 | 前年の申告納税額15万円以上 | 前年の確定消費税額48万円超 |
| 通知時期 | 6月中旬 | 4月以降随時(納期に応じて) |
| 納期回数 | 年2回(7月・11月) | 年1〜11回(消費税額により変動) |
| 減額申請 | 7/15・11/15締切 | 仮決算による中間申告で対応 |
| 振替納税 | 利用可 | 利用可(別途設定要) |
所得税の予定納税(基準額30万円規模)と消費税中間納付(基準額同程度)が同じ7月・11月に重なるケースもあり、口座から立て続けに引き落とされて初めて「消費税のほうも払っていたのか」と気づく事業者は珍しくない。年商1,000万円超の本則課税フリーランスは、6月時点で両方の通知書が手元にあるか必ず確認したい。
税理士に頼むラインの目安
減額申請も換価の猶予も書類自体は1〜2枚で、税理士に頼まなくても自力で出せる。実際、所得1,000万円規模までは自分でe-Tax経由で完結させているフリーランスが多数派だ。
ただし、所得1,800万円超で法人成り検討中、不動産所得と事業所得の両建て、消費税本則課税で課税仕入の按分計算が複雑、といった条件が重なってきたら、年顧問料15〜30万円の税理士契約のほうが減額申請の精度・換価の猶予の交渉力で元が取れる。境界線は「自分で確定申告書を作るのに毎年30時間以上かかっているか」だ。本業の時給換算でその時間が顧問料を上回るなら、即依頼でいい。
毎年税務署窓口で繰り返されている誤解を3つ整理しておく。
「予定納税を払わないと延滞税がつかない」は嘘 — 第1期7月31日の翌日から延滞税が走る。納期限後2ヶ月以内は年2.4%、2ヶ月超で年8.7%(2026年特例基準割合の見込み)。確定申告の延滞税と全く同じ仕組みだ。
「減額申請は税務署に呼ばれて面談がある」は嘘 — 通常は書類審査のみで、追加資料の提出依頼が郵送で来るかどうか。電話での確認はあり得るが、対面面談は廃業届を伴う大型減額のとき以外まずない。
「振替納税にしておけば自動で全部やってくれる」は半分嘘 — 振替納税の口座引落は確かに自動だが、「残高不足で引落不可」だった場合は自動再引落されない。納期限から1ヶ月後の引落日に残高がないと、即延滞税スタート扱いになる。第1期分の引落は8月末頃、夏のボーナスを使い切った直後の口座残高には注意したい。
ついでに4つ目を補足しておく。「予定納税は確定申告で多く払い過ぎた分を還付してもらえる」は本当だ。第3期(翌年3月)の精算で、予定納税の合計額が本来の年税額を上回っていた場合は、差額が還付金として指定口座に振り込まれる(通常は申告から1〜2ヶ月後)。減額申請を出さずに過大に納めていても、確定申告まで待てばちゃんと戻る——ただし、その間の運転資金が圧迫されるので、減額申請のほうが先回りで効くという話だ。
5月から12月までの実務カレンダー
通知書到着前から第3期精算までの動きを時系列で整理しておく。
- 5月〜6月初旬:前年の申告書を見返して、予定納税基準額を概算試算しておく(第3期分=年税額×1/3)
- 6月15日〜20日:通知書到着→第1期・第2期の金額を確認
- 6月25日まで:振替納税口座の残高チェック
- 7月初旬:2026年の見込み所得を再試算→減額申請の要否判断
- 7月15日:減額申請書の提出期限(郵送なら必着)
- 7月31日:第1期分納付期限(振替なら8月末頃に引落)
- 10月末:売上見込みを再確認→第2期分の減額申請を検討(11月15日まで)
- 11月30日:第2期分納付期限(振替なら12月初旬に引落)
- 2027年3月15日:確定申告で第3期分を精算
予定納税は仕組みを理解してしまえば「年税額の3分の2を前倒しで払う分割払い」でしかない。怖いのは知らずに通知書が届いた瞬間と、払えないまま放置して延滞税が雪だるま式に積み上がる時だけだ。今のうちに自分の所得で第1期がいくらになるか紙に書いてみるところから始めれば、6月15日の茶封筒もただの郵便物になる。
1つだけ実行可能な提案を残すとすれば、前年の確定申告書(2025年分)を引っ張り出して、第3表の「申告納税額」を3で割ってみてほしい。それが2026年6月通知の予定納税基準額の概算だ。10万円を超えていたら7月と11月のキャッシュフロー計画に組み込み、3で割った数字より実際の通知額が小さければ2025年税制改正(基礎控除10万円増)の効果、大きければ売上が伸びた証拠——どちらにしても、通知書を開ける前に身構える時間がある。それが減額申請の準備にも、換価の猶予の事前検討にも、振替納税の口座残高確保にもつながる。先回りして動ける税制ほど、家計に効く。